第10話 ウ○コのつよさ
異世界のトイレから――
今日は、魔の森でウ○コと旅をします。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
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提 供
カ ク ヨ ム
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♪チャーラー ラー
この異世界に来てから、私はずっと1人で旅をしてきました。
トイレのレポートなんて、誰も一緒にしてくれるとは思わなかったからです。
だからさっき勇者さんたちのパーティを見て、正直うらやましかったです。
にぎやかで、笑いが絶えなくて、苦労するときもみんなと一緒で……。
そんな私にも、ついに仲間ができました。
「ビチビチ、ビチグソー!」
…………ウ○コですけど。
BGM ♬旅は道連れ、余は情けない
くそリンは嬉しそうに、私の横に並んで跳びはねています。
まだ生まれたてだからか、移動速度はそこまで速くないので、一所懸命私についてこようとします。近くに来られると臭いので、横に並ばれると私は自然と早足になってしまいます。そうしてくそリンが離れると、ひと息ついて速度を落としますが、くそリンはそれを逃さず追いついてきます。そうするとまた私が足を速めて……と、しばらくはそんなことを繰り返していました。
くそリンは必死に汗をかきながら、私についてきます。
……ウ○コなのに汗かくんですね。
私は匂いに耐えきれなくなって、くそリンに言いました。
――あの、臭いので少し離れてもらえませんか?
「ビチ……、ビチビチ……(しょぼん)」
くそリンはしょんぼりすると、それからは私から3メートルほど離れてついてきてくれました。素直に言うことを聞いてくれるし、悪い子ではないと思うのですが。
あれ……?
ちょっと異変が起きてますね。
くそリンが私から離れると同時に、なぜか魔物がうようよと私の近くをさまようようになりました。あ、これは危ないですね。私のスキル、チートエンカウンターを使わないと……。
【 チートエンカウンター:移動スキル 】
【 移動中に敵と遭遇する確率を極限まで減らす、女神から授かった特殊スキル。使用している間は体力も魔力も消費しないが、すぐにトイレに行きたくなるという弊害もあるため、長時間の使用には注意が必要である。 】
これがチートエンカウンターのフレーバーテキストです。
私が転生したときに女神から授かったのですが、しょっちゅうお腹が痛くなってしまうんですよね。まあ冒険者にとっては本当にチート級のスキルなので、仕方はないのですが。
私がいつもトイレに行きたくなってるのは、このスキルがあるからなんですよ。
……いえ、嘘です。トイレに興味があるからです。
【 ジャーナリストは チートエンカウンターを つかった! 】
【 すこし トイレがちかくなった きがした! 】
うむむ、さきほど用を足したばかりだというのに……。
しかし不思議なのは、先ほどまでこのスキルを使っていなかったのに、モンスターがぜんぜん寄ってこなかったということですが……。
そういえば、くそリンを仲間にしてからですね。
もしや、このくそリンの臭い……。
くそリンのステータスを見てみましょうか。
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くそリン 性別・年齢 ともに不明
モンスター:レベル1【できたて】
ちから :8 最大HP:15
すばやさ:25 最大MP:3
まりょく:2
スキル 無限チートエンカウンター(移動)
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まあ、強さは予想通りという感じですが……。
気になるのは、この【無限チートエンカウンター】ですね。
【 無限チートエンカウンター:移動スキル 】
【 移動中に敵といっさい遭遇しない。むしろ敵が逃げていく。場合によっては味方も逃げていくことだろう。消費するものは何もないが、使用不使用が選べない先天性のスキル。とにかく臭い。】
味方まで逃げるって……気持ちはわかりますが。
でも敵と遭遇しないのは素晴らしいスキルではないでしょうか。
――くそリン、先ほどはすみませんでした。私の隣を歩いてもいいですよ。
「ビチビチ!? ビチグソー!!(ぴょんぴょん)」
くそリンは急に元気になったと思ったら、すぐに私の横まで跳んできました。そんなに私と一緒に歩くのが嬉しいのでしょうか。何かほほえましいです。
【 ジャーナリストは チートエンカウンターを かいじょした! 】
【 せまりくるべんいが おさまった きがした! 】
さて、モンスターはどうでしょうか。
私がスキルを使わなくても、モンスターはまったく寄ってきません。
それどころか、私のスキルよりも有効範囲が広いようで、どんどんモンスターが離れていきます。
このウ○コ、有能!!
――やりますね、くそリン!
「ビチビチビッチ!!」
くそリンは私の役に立ったことが、とても嬉しいみたいでした。
高く跳びはねて、私の肩に乗ってこようとします。
――あ、ダメですよ。私に触らないでください。
「ビチ…………」
今の、ケチって言ったのでしょうかね。
ふたたびくそリンはしょんぼりしてしまいました。
ともあれ、私とくそリンの距離は少しずつ縮まっているようです。
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