第9話 戦闘(相手は自分のウ○コ)

 異世界のトイレから――

 今日は、魔の森でウ○コと戦います。



♪チャラッチャッチャッチャチャーララー



  ――――――――――――――――


      提     供


     カ  ク  ヨ  ム


  ――――――――――――――――



    ♪チャーラー ラー








【 くそイム が あらわれた! 】


 ……スライムみたいに言わないでくださいよ。



 くそイムとやらに、私は思わず鼻をつまんでいました。

 自分が出したものとはいえ、汚いものに変わりはありません。

 嫌悪感はあるものの、それ以上に私はあふれ出る好奇心と探求欲にかられて、ただひたすら観察をしていました。レポートのためにひたすらメモを取ります。自分のウ○コが魔物になるなんて機会、滅多にないですからね。


 いや、職業病というのは恐ろしいものです。



  BGM ♪♪ひとりでトイレできるかな?



 まずは形状。それはもう、立派なまきグソです。

 完全な これ → 💩 マンガ以外で初めて見ました。


 ヘビのようにとぐろを巻いて、綺麗な円錐を描いています。頂点がにゅっととんがっているのが、まるでソフトクリームのようで愛らしいですね。……あ、ただいまソフトクリームを食している方、申し訳ございません。


 私がひり出したときは、バナナのような一本グソが3つほどだったはずなのですが、どうやら自力でくっついて、一本の長いウ○コに戻ったようです。一度切れていたというのに、これはなかなか根性がありますね。


 次に大きさ。身長は10センチほどで、それほど大きくはありません。

 色は黄金色に近い茶色。堅さはギリギリ固形をたもっているくらいで、たいした力もかけずに木の枝が刺さりそうな感じです。


 そんな外見に、デフォルメ調の間の抜けた目と口がちょこんとついていました。

 よく見てみるとかわいい…………なんてことは、ありませんね。

 ドロッとしている姿と、気持ち悪い色と、なにより匂いが……。



「ビチビチ、ビチグソっ!」



 ポケ○ンのようにしゃべっていますが、ぜんぜんかわいくないです。

 想像してごらん。自分のウ○コが動いてたら、かわいいですか?



「ビチビーッチ!!」



 そして、くそイムが私に襲いかかってきました。

 うおわあああ――っ!!


【 くそイムの こうげき! 】

【 ジャーナリストは ひらりと身をかわした! 】


 いきなりのことで驚くわたしですが、間一髪のところで、くそイムの体当たりを避けることに成功しました。


 ハァハァ……。あ、危ねええ!!

 どんな魔物の攻撃よりも怖いんですけどおおっ!!


 体当たりで飛びかかったくそイムは、その対象がいきなりいなくなったため、その先の地面に激突してしまいます。そして――――ベチャッ!!


 あ…………。


 くそイムは、原型がなくなるくらいにつぶれてしまいました。



【 ジャーナリストは くそイムを やっつけた! 】

【 けいけんち 1をかくとく! 】



 人生で初めて得た経験値が、まさか自分のウ○コとは……。

 こんなゲームが実際にあったら、壁に投げつけたくなりますね。

 いや、むしろ子供なら喜ぶかも……?


 とにかくウ○コに冥福を祈ると、私はいち早くその場を離れることにしました。


 しかし私の目の前を、メッセージウインドウが邪魔します。




【 なんと くそイムが おきあがり なかまになりたそうに こちらをみている! 】



 ……え?

 えええええええっ!?


 驚きのあまり振り向くと、くそイムは元の形状に戻っていて、ジッとわたしの方を見ていました。

 思えばここで、振り向かずに逃げていればよかったのですが……。



【 なまえは くそリンと いうらしい 】

【 なかまに くわえますか? 】

   →はい 

    いいえ



 いやいや、いくら捨てられた子犬のように私を見ていようとも、ここは「いいえ」一択に決まっているでしょう。

 ちょっと罪悪感にかられながらも、私は「いいえ」を選択します。



【 なかまに くわえますか? 】

    はい 

   →いいえ ピッ!








【 くそリンが なかまに くわわった! 】







 はあっ!? 何でだよおい!!






【 自分の排泄物は自分で責任を持ちましょう 】




 …………。

 しごく真っ当なことを言われてしまいました。

 現実世界でも、ペットの排泄物は飼い主が片づけないといけませんしね。自分のものならなおさらでしょう。これは仕方がありません。


 それにしても。

 ここだけ流暢な言葉だと、妙に腹が立ちますね……。

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