第8話 おおきいほう
異世界のトイレから――
今日は、魔の森でおっきい方をします。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
――――――――――――――――
提 供
カ ク ヨ ム
――――――――――――――――
♪チャーラー ラー
『ジュラララララララァ――ッ!!』
全長2メートルを超える人面樹が、私たちに襲いかかってきます。
太い枝を振りかぶると、ムチのようにしならせて殴りかかってきました。
「させるかー!」
「にょにょにょー☆」
勇者さんと女戦士さんが前に出ると、盾で防御してくれました。
それにしても、この魔物はどこから現れたのでしょうか。
先ほどまで、周辺には普通の樹しかなかったはずですが。
「この森の瘴気はな、あらゆるものを魔物化させちまうんだ」
人面樹と戦いながら、勇者さんがそう説明してくれました。
BGM ♪♪森の木陰でドンジャラ
――魔物化、ですか?
「ああ。アンタや俺たちは瘴気を寄せ付けないアイテムを持っているからだいじょうぶだが、そうじゃないものは一定の確率で魔物になっちまうことがあるんだ。生き物でも無機物でも関係なくな。だから大事なものは肌身離さず持っておけよ。のんみたいなことになっても知らねーぞ」
――のんさん、何かあったんですか?
「…………ムイムイ」
のんさんは悲しそうに下を向いてしまいます。
――ムイムイとは?
「のんちゃんが大切にしていたクマさんのぬいぐるみだにょー☆ さっきうっかり落としちゃって、瘴気あびたら魔物になっちゃったんだにょ☆」
こちらも戦いながら、女戦士さんが説明してくれました。
――それはそれはご愁傷さまでした。しかしぬいぐるみだなんて、のんさんもかわいいところがあるんですね。
「……殺すぞ」
――あっと、すみません。
「とりあえずアンタ、戦えないなら足手まといだから今のうちにどっかに避難してくれ。このモンスターは俺たちで何とかすっからよ。おいガス、攻撃魔法よろしく!」
「……ウス」
ガスと呼ばれたガチムチ魔術師が、わたしを見て親指を立てました。
ここは任せてくれ、と言っているのかもしれません。
私はみなさんに感謝しつつ、その場を離れることにしました。
ただし、最後にひとつだけ情報を残していきます。
――魔王城にトイレあります! 1階東側の小さな扉です!
「マジかよ! これで魔王城攻略できるぞ!! サンキューな!!」
勇者さんのお礼を聞きながら、私はその場をあとにしました。
そして私は、近くにトイレがないか探していきます。
実はわたし、先ほどみなさんとトイレの話をしたせいで、もよおしてきてしまったのです。しかも小さい方ではなく、大きい方を――
トイレ、トイレ、トイレ……!!
懸命に探し求めて、そしてついに――見つけました!!
屋根も壁もない、洋式の便座がぽつんと1つ置いてあるだけ。
まわりが木々に囲まれていることもあって、壁はいらないということなのでしょうか。それでもまさしく、これはトイレなのです。隣に建ててある看板にも「トイレ」と書かれていました。
お腹が痛い。今にも出てしまいそうです。
トイレの観察は後回しにして、用を足してしまいましょう!
ところが……私は看板に驚くべき言葉が書かれているのを見つけてしまいます。
『ここで大便をするべからず!!』
こ、これはどういうことでしょうか。
便器は小便用ではなく、大便にも使える洋式タイプ。
これで大便をするなだなんて、そんな殺生な……!!
もう我慢できません。
わたしはズボンを下ろすと、便器に座っていきみます。
ぬ、ぬおおおおおおおおおおお――っ!!
…………ふう。
すべてを出し切りました。
備え付けの紙はないようなので、私は中腰のまま立ち上がると、荷物からお尻ふき用の紙を取り出して、綺麗にふきふきします。これでよし、と。
そういえば、用を足したあとはどうすればいいのでしょう。
こんなところにあるトイレが水洗ではないでしょうし、もともと便器の下に穴があけてあって、それを土で埋めればいいのでしょうか。そう考えながら便器を覗いてみます。すると、なぜでしょうか――
私が出したはずのウ○コが、そこにはありませんでした。
あれ? 何でしょうかねこれ??
もしかして、転移魔法で自動転送されたとか?
でもそんなことしたら、街が大惨事ですよね……?
と、そのとき。
すぐそこからかぐわしい匂いがしたので、そちらを見てみます。
かぐわしいというのはオブラートに包みすぎですかね。
ぶっちゃけ、排泄物の臭い匂いです。
そこには、ウ○コがピョンピョンと跳びはねていました。
間違いなく、私が排泄したばかりのウ○コでした。
そして突然の、メッセージウインドウ。
【 くそイム が あらわれた! 】
え……、嘘ですよね……?
これは…………、
わたしのウ○コ、魔物になっちゃいましたね。
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