魔の森

第6話 魔の森でトイレ

 異世界のトイレから――

 今日は、魔の森でトイレを探します。



♪チャラッチャッチャッチャチャーララー



  ――――――――――――――――


      提     供


     カ  ク  ヨ  ム


  ――――――――――――――――



    ♪チャーラー ラー







 ハイジリア王国の居城から南へ進み、シシリス砂漠を抜けた先。

 ガンダルギア地方へと入ったすぐのところで、空気中に含まれる瘴気がいっそう濃くなる箇所があります。


 そこが――魔の森です。


 魔の森は魔王城のすぐ手前にあり、打倒魔王を目指してきた冒険者たちを、退ける役割を果たしているのだと言います。

 森の中に入ると、磁場が狂っているせいで方位磁石が効かなくなり、冒険者たちは方向感覚を奪われます。黒く染まった濃い瘴気は吸い続けるだけで精神に異常をきたすと言われ、そんな中を何日もさまよって体力を奪われてきたところを、モンスターに襲われてやられてしまう、といったケースが多いようです。


 魔王城へ向かう途中、私もこの森を通過してきました。

 なぜレベル1のわたしが、この森に入ってもだいじょうぶなのか。それは番組スタッフが用意してくれたお守りのアイテムがあるからなのです。

 これを持っていれば、体の周囲にある瘴気を除去できるとのことです。ウチのスタッフは、いったいどれだけ有能なのでしょうか。


 魔の森には、多種多様なモンスターが住んでいます。

 魔王城ほど凶悪なモンスターはいませんが、最弱冒険者の私にとって驚異であることには変わりありません。

 見つからないように、注意深く進んでいきます。


 すると、正面から4人パーティの冒険者がやってきます。


 リーダー格のさわやか勇者に、モデル並のプロポーションを持つ女戦士、屈強の肉体を持つガチムチ魔術師と、15歳は超えてるだろうに小学生並にちっこい女僧侶。


 ……あれ、この4人。

 どこかで見たことがあるような気がしますね。


 ああ、先ほど魔王城で全滅していたパーティでした。


 女神の祝福を受けた冒険者は、モンスターにやられて遺体になると、最後に立ちよった街の教会に瞬間移動するようになっています。そこで神父さんに蘇生をさせられて、莫大な金額を支払った上でふたたび冒険に出るのです。


 何度も死ぬなんて、大変ですよね。

 それが仕事だと言えば、それまでなのですが。


 ちょうどいいので、ちょっとインタビューしてみましょう。


 ――あの、すみません。


「おう、何だ? ――って、そっちから来るヤツは珍しいな」


「ちょちょりーっす☆」

「…………ウス」

「殺すぞ」


 最初に返事をしてくれたのが、リーダー格の勇者さん。

 続いてモデル女戦士さん、ガチムチ魔術師さん、ちっこい女僧侶さんです。


 ……って、女僧侶さん怖すぎなんですけど。

 聖職者が殺すぞって、いいんでしょうか。

 私、何もしてないですよね?


「ごめんにょー☆ この子普段からこんな感じなの☆」


 女戦士さんにフォローされると、プイッとそっぽを向いてしまう女僧侶さん。

 ああー、わかりました。

 こういう性格の方なのですね。


「で、俺たちに何の用だ? 道にでも迷ったか? いや、それにしちゃ落ち着いてるよな。じゃあ古代遺跡でも探してるのか? 近くにあるって噂だけど……」


 ――いいえ。実は、トイレを探しているのです。


「……トイレ?」


 あ、勇者さんが変な顔になってる。

 いきなりこんなこと聞いて、変なやつだと思われてしまったでしょうか。

 しかしここまで来て、やっぱりいいですとは言えません。


 ――この近くに、どこかないでしょうか?


「うーん、俺は知らないな。お前らは?」

「知らにゃーい☆」

「ウス」

「…………」


 みなさん知らないようですね。

 この際です。

 せっかくなので、前から気になってることを聞いてみましょう。


 ――あの、みなさんはトイレどうしてるんですか?


「…………」

「………☆」

「………ス」

「こ、殺すぞ(////)」



 あー、今回の女僧侶さんは正しい「殺すぞ」ですねー。

 でもそれにしては、ちょっと顔が赤くなってる気が。

 何ででしょうかねー?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー