第3話 魔王と一緒にトイレ

 異世界のトイレから――

 今日は、魔王に見られながら用を足します。



 ♪チャラッチャッチャッチャチャーララー



  ――――――――――――――――


      提     供


     カ  ク  ヨ  ム


  ――――――――――――――――



    ♪チャーラー ラー








 さて、魔王から逃げられない私ですが、

 番組始まって以来の、絶体絶命のピンチです。


 魔王がゆっくりと、こちらに近づいてきます。

 すごく機嫌がよさそうに、鼻歌を歌っていますね。

 このあと、私はどうなってしまうのでしょうか。



 魔王は、私の横に立ちました。

 そして――ジィィィィィ。

 股間に手を当てると、ズボンのチャックを開けます。






 まおおおおおおおおおおおおおおおおうっ!!






  BGM ♪♪ラストバトルは突然に



 何でお前はここで用を足そうとするんだ――!?


 確かにここは魔王城のトイレだ!!


 でも魔王なら!

 自室に!

 個別の立派なトイレが!

 あったっていいだろ!

 わざわざこんな!

 ザコモンスターと一緒の!

 公衆トイレを使うな!!






 ハァハァ……。

 申し訳ございません。

 あまりのことに取り乱してしまいました。

 


 【 どうする? 】

   →たたかう 

    にげる  



 またコマンドですか。

 こうなったら、もうヤケクソです。



 【 どうする? 】

   →たたかう ピッ!

    にげる  






【 魔王のアソコ は 20センチメートル(通常時)も ある! 】


【 ジャーナリスト は 勝負にならなかった! 】



 うるせえええええええっ!!

 何でたたかおうとしてるんだお前は!!


 あ、ナニか。








 …………。










 何を納得しているんでしょうね、私は。




 それにしても、魔王のナニというのは大きいものなのですね。隣で用を足そうとしている魔王を、仕切りの上から覗いてみます。社会の窓からボロンっと飛び出た魔王のいちもつは、それはもう大きいものでした。


 そして何より、黒光りしていて固そうです。

 さすがは魔王ですね。



 魔王は私に構わず、用を足し始めます。



 ジョババ、ジョバババババババババッ!!




 これは……何という勢いでしょう。

 そして驚くべきことは、これだけではありませんでした。


 何と、魔王は――――





 お  し  っ  こ  も  黒  い





 これには衝撃を受けました。

 さすがは魔王。黒い、黒すぎです!!




「――――おい、愚かな人間よ」




 そのときのことでした。

 魔王が私に話しかけてきたではありませんか!!


 職業柄、何人もの初対面の方に積極的に話しかけてきた私ですが、これには心臓が飛び出しそうになりました。魔王の怒りを買ってしまったのでしょうか。誰だって用を足しているところを覗かれたら、いい気はしませんよね。



「あまり顔を近づけて、余の尿から出る湯気を吸いこむでないぞ」



 しかし以外にも、魔王の声は優しいものでした。


 これは、どういうことでしょうか。

 見れば湯気の色まで、ほんのり黒くなっています。


 もしやこの湯気には魔王の瘴気が含まれていて、吸いこむだけで魔物化してしまうとか、そういう話なのでしょうか。

 だとしたら、この魔王はすごく優しい方なのかもしれません。思えば厳しい冒険で出会う方は、みな優しい人ばかりでした。魔物だからといって差別するようなことはいけません。この方もきっと、私のことを気遣ってくれて――――









「……臭いぞ。とびっきりな」









 ――――っ!?


 私は慌てて顔を背けました。




 予想とは違いましたが、確かに魔王は優しい方のようですね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る