第2話 魔王城で用を足す
異世界のトイレから――
今日は、魔王城のトイレで用を足します。
♪チャラッチャッチャッチャチャーララー
――――――――――――――――
提 供
カ ク ヨ ム
――――――――――――――――
♪チャーラー ラー
実はさきほどから、尿意を我慢していました。
さっそく、小便器がある右側へと移動して……。
おや、ここでおかしなことに気がつきました。
四つあると思っていた小便器ですが、
なんと奥の二つがなくなっています。
仕切りは四人並べるように配置されているのに、
便器があるのは手前の二つだけ。
奥の二つは、便器が以前は設置されていたのか、ねじ穴がいくつもあるだけで便器自体はどこにもありませんでした。
これはいったい、どういうことなのでしょう。
ここでいつもなら、誰かに声をかけて質問するところなのですが、ここは魔王城。さすがに声をかけられる相手がいません。ひとりで考えていてもわからないので、便器の観察を続けることにしましょう。
小便器は金属製ですね。
試しに叩いてみると、コーンと心地よい音が響きました。
輝きも見事なものです。ここで立ちションをしたなら、さぞ気持ちいい気分になれることでしょう。
それでは実際に、ここでおしっこをしてみたいと思います。
ここまでの冒険で、限界にまでふくらんだ私の膀胱。
とてつもない量の尿が出ることでしょう。
BGM ♪♪解放者 ~小便のリズムにのせて~
おお、出てくる出てくる……。
これは――気持ちいいものですね。
魔王城という、普段とはまったく異なった雰囲気の場所で、いつもと同じように立ちションをする。まるでおしっこと一緒に、私の中にある負の感情が流れ出ていくようで、日々の悩みがちっぽけなものに思えてきます。
ギィィィィ……。
用を足している途中で、入口の扉が開く音が聞こえました。
誰か入ってきたのでしょうか。
そちらを見て、私は固まってしまいました。
【 魔王 が あらわれた! 】
――――何だって!?
おっとっと、これはいけませんね。
驚きのあまり、つい普段の口調になってしまいました。
落ち着いて、入ってきた者の姿を見てみます。
人間に似た体格なのですが、その実……屈強な肉体に、背中からはコウモリに似た闇の翼が生えていて、尻にはは虫類のような太い尾がありました。これはまぎれもなく、人類の脅威――魔王ではありませんか。
なぜ魔王がここに……?
いえ、魔王城なのですから、魔王がいても何もおかしいことはないのですが……それにしても、この状況、どうしましょうか……。
【 どうする? 】
→たたかう
にげる
――――っ!?
コマンドが出てきてしまいました。
いやいや、たたかうなんてできるはずがありません。
私のステータスを見て頂ければわかって頂けると思います。
――――――――――――――――――――
ジャーナリスト 男 18歳 レベル1
ちから :10 最大HP:22
すばやさ:6 最大MP:6
まりょく:3
――――――――――――――――――――
実は私、まだレベルが1なんですよね。
仕方がないので、逃げることにしましょう。
【 どうする? 】
たたかう
→にげる ピッ
【 しかし にげられなかった! 】
……ですよねー。
魔王から逃げられるはずがありませんよね。
【おおジャーナリストよ! おしっこをしながら逃げるとはなさけない! 逃げるというのなら、おしっこを止めてからにするのじゃ!】
何で王様風なの!?
ああ、逃げられなかった理由というのは、相手が魔王だからというよりも、用を足している最中だったからなのですね。
ですが、おしっこを途中で止めるなんてできるわけがありません。
仕方なく、私はこのままおしっこを続けることにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。