異世界のトイレから ~異世界の様々なトイレを突撃取材~

非常口

魔王城

第1話 魔王城のトイレ訪問

 異世界のトイレから――

 今日は、魔王城のトイレにお邪魔します。



 ♪チャラッチャッチャッチャチャーララー



  ――――――――――――――――


      提     供


     カ  ク  ヨ  ム


  ――――――――――――――――



    ♪チャーラー ラー







 死の大地とも呼ばれている、ガンダルギア地方南西部。

 行く手を阻むように、数多の高大な岩山がそびえ立ちます。

 魔王城は、その合間に建てられていました。


 中に入ってみましょう。

 薄暗い空間、ひんやりとした空気の中、

 フィールドでは見たこともないような強大な魔物が、

 侵入者を見つけ次第おそいかかろうと、徘徊しています。


 私も、見つかればすぐに殺されてしまうことでしょう。

 アポイント? 取っていませんよ、そんなものは。

 取れそうにないという理由もありますが、

 そもそも取っているはずがないんです。


 この番組は、毎回そういう趣旨ですから。



  BGM  ♪♪魔王城は危険なカオリ



 さて、魔物に見つからないように進んでいきましょう。


 おや……?

 奥から物音が聞こえてきますね。

 ちょっと覗いて見ると――いました。冒険者のパーティです。


 ボス級の魔物と戦っているようで、何やら劣勢の様子。

 おおっと、回復役がやられてしまいましたね。

 復活アイテムの「天使の羽」は常備していないようです。


 気持ちはわかりますよ。

 レアリティがSSですもんね、あのアイテム。


 回復役が倒されたあとは、

 一人、また一人と、倒れていきます。

 魔物がそちらに気を取られている間に、

 こっそりと先に進んでいきましょう。



 さて、こちらの部屋は何があるでしょうか。

 不気味な音を立てて開く扉の奥には――宝箱があります。

 中を開いてみると、これは伝説の勇者が愛用した鎧ですね。


【 ジャーナリストは ゆうしゃのよろい を 手にいれた! 】


 でも残念なことに、私の目的はこれではありません。


【 ジャーナリストは ゆうしゃのよろい を 投げ捨てた! 】


 それでは、さらに進んでみましょう。




 さらに奥に行くと、もうひとつ部屋を発見しました。

 さきほどの部屋に比べると、扉が小さめですね。

 そのとき、中から一体の男性らしき魔物が出てきました。

 私は慌てて隠れます。


 魔物はご機嫌な様子で、ハンカチで手を拭きながら、隠れている私には気がつかずにどこかへ行ってしまいました。ハンカチ、使うんですね……。


 さて、ここは――当たりなのでしょうか。


 期待を胸に、中へ入ってみましょう。


 ギィィィィ。

 きしんだ扉を開くと、そこには……?


 ありました。――トイレです!


 右側には小便器が四つ並んでいます。

 左側には個室が二つと、手洗い場が一カ所。

 魔王城という割には、手狭な感じの公衆便所です。


 人間の男子トイレと、これといった大差はないですね。

 くみ取りではなく、水洗式のようです。


 年期が入って老朽化しているのが、所々で見受けられました。

 しかしそれにしては、掃除が行き届いて綺麗に使われているようです。

 粗相のあとや目立った汚れは、見当たりません。


 ふむふむ、最終盤に出くわす最高ランクの魔物たちは、毎日このようなトイレを使って用を足しているのですか。


 もしかしたら魔物は、人間よりもずっと律儀で礼儀正しいのかもしれません。こういうちょっとしたところで、そこに住む者の人となり――いえ、魔物となり、が現れるものですからね。




 それでは試しに、私もここで用を足してみたいと思います。

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