三課の木下さん

 三課の木下さんはあまり喋らない。

 いつも黙々と何かしら作業をしていて、なるほど雑談なんてしてる暇は無いのかもしれないけれど。

 それにしたって黙りすぎだ。


 朝廊下でばったり会って挨拶しても、ぺこりと頭を下げるだけ。

 急ぎの仕事を捻じ込んでも、文句のひとつも言いやしない。

 あっという間に仕上げて届けてくれたときも、控えめに名前を呼ばれただけ。



 真面目で信頼できるけれどつまらないひと。


 それが木下さんの評価だ。



 それに反論することは難しい。当の木下さんだってそう思っているような節がある。

 だからこんなの変なんだけど。





 私は嫌で。



 木下さんは、無口だけど誠実で頼れるひとだよ、って。

 私は言いたくて。


 ひと言にも満たないような素っ気ない返事が欲しくて。


 名前を呼ばれたら嬉しくて。



 だから。



 今日も


 たまたま、ばったり


 朝の廊下ですれ違う。





 三課の木下さんはいつも黙々と仕事をしてる。


 真面目で。信頼できて。ちょっと無口な。



 私の大好きなひと。

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