おしるこ

 ガコンと自販機が鳴り、俺は手を突っ込んで熱々の缶コーヒーを掴んだ。北風が剥き出しの耳を撫でてゆく。



 クッソさみ



 早く体の中から温めようとプルタブに手をかけ……



  おしるこ!

 うっわミスったー

 隣のおしるこ押しちゃったか



 残念ながらおしるこの気分じゃない

 しょうがない買い直そう

 慎重に確かめてコーヒーを……


 ガコン。



 って

 またおしるこかーい



 そうかそうか。業者め入れ間違えたな

 てことは、隣のおしるここそがコーヒー


 ガコン。



 ……


 何故だ。たまたまか? たまたまなのか?

 やっぱコーヒーはコーヒーの枠に


 ガコン。



 またかよ!

 そんなネタ要らねー

 どうすんだこのおしるこたち

 しょうがない。帰って餅焼いてかけて食うか

 汁粉だけ飲むとか無理無理


 そんなことよりコーヒーはどこに

 まさかまるっと全部おしるこ……


 無い無い

 さすがにそれは無いだろ



 よーし分かった

 そっちがその気ならこっちも容赦しねえ



 俺はカバンにおしるこの缶を突っ込んだ。


 覚悟しやがれ。吠え面かくなよ!

 

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