狂咲き2

「あなたを留めている葉は何ですか」



 真っ直ぐに向けられた視線を

 ついうっかり正面から受け止めてしまった



「何だそれ

 葉っぱなんか付いてないし

 そもそも、咲かせる蕾がない」



 乾いた笑いと共に吐き出した言葉を

 常ならば苦笑と共に受け入れるのに


 お前は動かない



 ただじっと立って私を見詰める


 呼吸さえも止めて


 秋の宵の肌寒ささえ忘れる熱で



 私はその揺るがない瞳が恐ろしい

 傷付くことを厭わない率直さは

 いつかお前自身を折るに違いない



 無理矢理に視線を剥がして歩きだす


 そうすればお前も

 溜息ひとつ、歩きだす



 いつもそうだろう

 いつもそうじゃないか



 なのにお前が動かないから

 

 怖くなる




 息を詰めて足を運ぶ


 止まることも振り返ることも出来ない私を

 追い詰めないでくれ



 遥か後ろで溜め息が漏れる

 砂利を踏んで歩きだす気配


 そっと


 安堵の息を吐く



 苦笑

 溜息

 諦めと

 許容



「ちょっと飲んで帰りましょう」



 そのくらいの譲歩は見せろと

 お前の瞳が語る


 きっと



 怯えなど疾うに見透かされている

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