プラタナス
今日も雨が降っている
学食に独りぼんやりと座って
プラタナスの並木に目を遣った
毒々しいまでの迷彩柄
剥げた樹皮の作る斑模様
それが雨に濡れて色を濃くし
毒を放っている
適当に頼んだA定食が
テーブルの上で冷めてゆく
様々な色に層を成すプラタナス
人の心もまた
一皮剝けば思わぬ色が顔を出す
溜息ひとつ
冷めた鯵フライにソースをかけた
「鯵フライには醤油だろう」
見上げると
気鬱の元が見下ろしていた
ぷいと横を向いてソースのかかった鯵フライを齧る
あ
「おお、意外と旨い」
私の鯵フライを咥えたそいつが
当たり前みたいに向いに座った
ほかほかのA定食に醤油をかけて
「ほれ、こっちも食ってみ」って
無視してたら
鼻先に掲げて
あーんって
もう、馬鹿にして
だけど
いい匂い
私はぱくりとひと口
「おいしい」
「だろ? どっちも旨いな」
嬉しそうに笑う顔が憎たらしい
さっき喧嘩したこと
もう忘れちゃった?
怒った顔
笑った顔
優しさも
意地悪も
あなたが見せる斑模様
大嫌い
嘘
大好き
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