羽化



かたい殻を脱ぎ捨てて私たちは巣立ってゆく



不自由だけれど優しくて

鬱陶しいけれども安心できた


あなたと私を繋いでくれた



この場所から




蛹のままでいたいと希うのは

甘えだと知っている

いつまでも葉に留まることは出来ない




胸に小さなリボンを飾って

みんな同じ制服を着るのも今日が最後

聴き飽きたゆったりしたメロディー

お定まりの送る言葉

何度も練習して暗記してしまった答辞


そんなありきたりの何もかもが

怖いくらい胸に迫ってくる



きっとそれは

抱えきれないほどの思い出のせい



いっぱい笑ったね

ケンカもしたね

授業中の目配せ

お昼休みの屋上

放課後、長く伸びる机の影


いつか終わりが来るなんて

考えもしなかった




零れた涙が

殻を破ったばかりのやわらかい翅に落ちる





その翅をゆっくり広げて


恐る恐るはばたかせて


見たことのない空を渡ってゆく





優しいこの場所とは

今日でお別れ


だけど


抱えきれないほどの思い出は

涙は

笑顔は


きっとずっと忘れないから





ありがとう


みんな、大好き!

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