初詣



 付き合い始めというのは何だかぎこちない。


 もうずっと片想いをしていて、これからもずっとそうなのだと思っていた。


 お酒の勢いでつい踏み出してしまったイヴの夜。思いがけず回された温かい腕。

 あれからたった一週間。もう一週間。


 彼は閉店までずっと居てくれて。家まで送ってくれて。

 二人で過ごす時間は少し増えた。

 だけど。


 並んで歩いていても指先さえ絡まない。

 宿り木の下のキスだって、結局もらっていない。



 あなたは私のものよ、って。

 私はあなたのものよ、って。



 そんな確かな何かを求めるのは欲張りだろうか。





「初詣に行きませんか?」


 別れ際、彼が言った。

 明日と三が日はカフェはお休み。暫く逢えないな、って思ってた。


 デートだ! すごく嬉しい。




   🗻




 神社はすごい人だった。並んで歩いていてもはぐれてしまいそう。


 ふと、指先にぬくみが触れた。


「逸れるといけないので」


 触れた温みに力が籠る。


「そうね」


 私は染まる頬を隠したくて。



 少しだけ、彼に寄り添った。

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