月を愛でる
「明日はスーパームーンなんだって」
スマホをいじりながら由香が言った。
「ふうん」
大して興味もないので、こちらもスマホをいじりながら気のない返事を返す。
途端。
バシン、と大きな音がして、俺のスマホは部屋の隅まで飛んでいった。
何すんだ、と、出かかった科白を咽の辺りで寸止める。
由香のきれいに整えられた眉が吊り上がっている。
なのに、目尻が微妙に垂れて瞳が潤みかけている。
やばい。
これは面倒臭いやつだ。
考えろ、俺。
正しい答えは何だ?
「一緒に見に行きたい、な?」
こくん、と由香が頷く。
よし、正解。
セーフ。
ちらりと部屋の隅のスマホに目を遣る。
あっちは、多分アウトだ。
「どこに見に行く?」
由香の顔が嬉しそうに輝き、スマホの画面を見せてくる。
「ちょい待って」
転がったスマホを拾い上げて画面を確認。
小一時間掛けて組上げたデータはパア。
まあ、いいか。
頬を付けるようにして、ふたり小さな画面を覗き込む。
さあ、明日はどこに行く?
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