第三話 魔法少女に24歳は含まれますか?
僕はまず、話の通じそうな(性格的に見た時の話ね?二人とも町で見かけたら目を合わせないようにするレベルだからね!)肩までかかった桜色の髪と目をしており、ピンクと白のフリフリとした所謂、魔法少女のような派手な格好をしている女に話しかける。
皆さんお気付きだろうか。そう、女である。小さな女の子が、『私は魔法少女○○!!』とか言っているのはまだ可愛らしいが、今その服を着ているのは完全に大人と見ただけでわかるような容姿をしている女である。
戦慄せずにはいられない。
僕がどうやって話しかけようかと悩んでいると、幸いな事に向こうから話しかけてくれた。
「あ、あのぉ、あなたが第六騎士団の団長さんですか?」
「あ、あぁ。僕が第六騎士団団長、シルドだ。僕は貴族の出じゃないから名字はない。気安くシルドと呼んでくれ。それで、ええと、君は?」
「あ、申し遅れました。私、サクラと言います。年齢は24です。もともとは冒険者をやっていたのですが、少し問題を起こしてしまって…。それで、こちらの騎士団の方で募集がかけられてるのを見て、応募しました。それと、こちらは親友のキノリンです」
最初の自己紹介の下りで、この子案外普通じゃね?と思い安心したが、僕はその直後に『少し問題を~』の下りで地雷臭を感じ、また虚空を指してキノリンと紹介する彼女を見て、今度は普通に言い知れぬ恐怖を感じる。
止めとばかりに、歳が24と僕より一個上の年齢であると知り、なおさら恐怖が襲う。
どうして…、どうしてマトモな奴が来ないんだ…!
僕はこのやるせなさをどうにもできずに、もうヤケクソになって、気になることを聞いてみる事にした。
「凄い聞きづらいんだけどさ、キノリンって何処にいるの?もしかして、僕だけ見えないみたいな感じだったりする?しかも24でそのかっこで恥ずかしくないの?」
そこまで言うと、彼女はその真ん丸な瞳を湿らせ、一瞬ウルウルっとしたと思うと、すぐにさめざめと泣き始めた。
それを見て僕は……、 うわぁ、やっちまた…っ とオロオロしていた。
ど、どうしよう。やっぱりタブーだったのかな?ヤッベェ、どう謝ろう?
暫く僕がそうして狼狽えていると、見てるとこっちが悲しくなるような泣きかたをしていた彼女は、おもむろに立ち上がり、叫んだ。
「知ってますよ!分かってますよ!私が一番よく分かってんだよ!他の人にキノリンが見えない事ぐらい。私のクラスが魔法少女だから服装が変で他人から痛々しい目で見られることぐらい。これのせいで結婚もできないし友達も離れていくし…私が一番よく分かってるんですよ!!」
クラス。
それは戦闘においてその人の役割を表すものである。これは15歳になると近くの教会などで神から言い渡される。それぞれのクラスごとに能力に補正がかかったりするので、あらかじめどのクラスに成りたいかは人それぞれ思うが、生憎自分で選ぶ事は出来ない。なのでたまにいるのだ。大外れを引く人が。
このサクラという女もそうなのだろう。
流石に可愛そうになったので、少し慰める。というか、それ以上彼女の話を聞いていると、心が狂いそうだ。もう今は実際にあった事を延々と話続けている。
早く、早く何とかしなきゃ…!
「そ、それは大変だったね。君の苦しみは僕もよくわかる。でも安心してくれ。この団には君みたいな子ばっかりだから恥ずかしがる事は無いさ。それに常に前を向こうとしなくて良いんだ。今から君の横には仲間がいる、疲れたら横向いて、僕らを頼ってくれ。良い人も見つかるよ!きっと、たぶん、いつかは」
「何で、途中まで良いこと言ってたのに最後までかっこよく決めないんですか!?そんなにダメですか私…、仕舞いには泣きますよ!?」
……鋭い娘だ。彼女は確かに美人なのだ。服装はともかく、スタイルは抜群で、顔もどちらかというとおっとり系で、前髪をピンで止めている。ただ、服装が全てをぶち壊している。
服装さえ、なんとかなればっ…!
「その服は、着替えられないのかい?服さえ変われば色々と不自由が無くなるとは思うけど」
「は、ははっ。もうそんなことやりましたよ。ええ。真っ先にやりましたとも。でもね、外せないんですよ。この服。15の時にこれに変わってそのまんまなんですよ」
サクラ吼える。目は悲しみと憎しみ、そして諦めの気持ちをたたえいる。本当にクラスを授かってからの9年間が辛かったのだろう。見ているとこちらが哀しくなってくる。
わ、話題を変えないと!
「えぇと、仕事の方の話をさせて貰うよ…。この第六騎士団は主にダンジョン攻略を目指している。ダンジョンって分かるかな?たまに魔力の濃度の高い所に出来る迷宮だ。あれは放置すると中で魔物が増え続け、あふれでてしまうから、そうなる前に攻略してしまうのが僕らの仕事だ」
「はい、先程いった通りここに来る前は冒険者をやっていたのでそこら辺は大丈夫です」
そこまで聞いたところで、僕は気づいてしまった。魔法少女の方ばっかりしか見ていなかったため、気づいていなっかった。もう一人の方が爆発寸前になっていたことを…。
「そう、詳しいことも聞きたいと思うけど、取り敢えずホームに戻って君の同僚となるひとたちを紹介してからそう言う話をしよう」
そういって、話を少々強引に終わらせる
じゃないともう一人の方が爆発しそうだからね。
その言葉を僕はギリギリで飲み込む。そしてふと横を見ると、椅子にふんぞり返って怒り心頭の様子のすっかり存在を忘れられた金髪碧眼の方が怒り心頭でこちらを睨んでいた。
逃げたい。
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