有馬タケル

最近、幼馴染の様子がおかしい。クラスが違うせいで全く喋ることもしなくなったが、時々帰り道で見かけるとどこか悲しそうな顔をしている。かと思えば、凄く上機嫌でスキップしていることもある。きっと何かあったに違いない、と俺は勘付いている。



その子の名前は富北ミチル。黒髪ストレートロング、真っ直ぐな瞳、華奢だが芯のあるスタイル。誰がどう見ても美少女の部類に入ると思う。最近、より美しさに磨きがかかったというか、綺麗になった。まさかミチルに彼氏が…なんて考えたくもないけれど、可能性は十分にあり得る話だった。


「おーい、ミチル。ミチルちゃん。」

「…あ、タケル。何?なんか用事?」

「久しぶりじゃん、ちょっと一緒に帰ろうぜ。」

「何よ?変なの。」

「まあまあ、クラス別れてから全然喋ってなかったからさー。」

「別にいいけど。」

「アイス奢ってやるよ、村上のばあちゃんのとこで。」

「ほんと?ラッキー。なんか機嫌いいね。」


それからしばらく、クラスの事とか、部活の事とか色々と二人で話した。だいぶ昔みたいにミチルの反応も砕けてきたから、俺は核心に触れてみることにした。


「ミチル彼氏とかいないの?」

「ばっ馬鹿じゃないの⁉︎いないよそんな人!」

「好きな人も?」

「っ好きな人は… 」

「いるんだ。誰?」

「言わないよ、そんな。知ったところでどうするの。」

「んー値定め?幼馴染としてミチルに似合う人かどうか見てやるよ。」

「いい。いらない。」

「つまんねぇな、ヒントぐらいくれてもいいんじゃない?」

「あんたとは正反対の人!」

「あっそ。」

「何よ、そっちから聞いたくせに。もう!」


少しどころか、もの凄く傷ついた。眼中に無いだろうとは思ってたけど、ここまで脈ナシだとは。

俺とは正反対の奴か。落ち着いてて、頭が良くて、しかもイケメンってか⁉︎これは敵わねえな…。


「そっちこそ、好きな子とかいないの?」

「そりゃいるよ。」

「えっ!誰だれ⁉︎」

「教えなーい。」

「え〜、気になるじゃん。」

「おあいこだろ?ま、お互いせいぜい頑張ろうや。」



俺の恋はもう8割惨敗コースだけど!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る