第2話

とりあえず、ここから移動したい。


アリスはそう思いながら、壁に何か隠されていないか手で触りながら確かめる。


すると途中で、


カチッ


と何かを押してしまった。


「え、何!?」


しかし、特に変わったことはなく、アリスは再び溜息をついた。


もう一度周りを見てみようと振り返った時、いつのまにか、部屋の中央にカゴに入った1つの瓶が置かれていることに気がついた。


「あれ?さっきまでなかったのに…」


アリスは不思議に思いながらも、カゴの中に手を伸ばした。


瓶の中には、ピンク色の液体が入っており、


【Eat me♡】


といかにも怪しそうな文字が書かれていた。


「『Eat me♡』…、私を食べて♡…って、なんか趣味悪。」


アリスは気味悪く思い、その液体は飲まずに瓶を自分のスカートのポケットへしまった。


「あ。そういえば、あの人は?」


アリスはふと、1人の青年を追っかけてきたことを思い出した。

確かに、同じ穴を通ってきたはずだが、彼の姿はどこにも見当たらなかった。

落ちている途中で抜け道とかがあったのかしら。なんて、あのスピードで落ちていたら不可能なことを考えた。


「ちょっと!誰かいないわけ!?」


少し疲れ始めたアリスはさじを投げるようにして周りに叫びかけた。

どうせ誰も返事をしないんでしょ。と毒を吐いて床に座った時、



「…そのままだと、物語は進まないねぇ。」



どこからか笑い気味の声が響いた。


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