アリスだって恋をする。

月雲

第1話

あの時の私は、本当にどうかしていたと思う。

鮮やかな色のおしゃれなタキシードを着ていて、眼鏡をかけていて、懐中時計を見ながら全速力で走っている青年に一目惚れして追いかけるなんて。

本当にどうかしていた。


アリスは落ちている穴の中でそう考えていた。

しかし、ゆっくり落ちているわけではない。とても速く、引っ張られるようにして、真下に落ちていっているのだ。


アリスが落ちながら後悔していると、急にチェス盤模様の床が現れた。


「うわぁっ!?」


アリスは運動神経が良かった為、咄嗟に着地を成功させた。


「ここは一体どこなの?」


辺りを見回してみると、様々な色や形や大きさのドアがたくさんあった。


アリスはそのうちの1つのどこにでもあるようなドアのドアノブを握った。


「あれっ?」


しかし、ドアノブを回してもドアは開かなかった。


隣の角が丸いドアも試しに開けてみた。…が、開かなかった。


他にも、正方形のドアや、丸いドア、ダイヤの形のドア、彫刻が施されているドア、…


残り1つとなるまで試してみたが、どのドアも開かなかった。


そして、最後のドア。


それをアリスは開ける気にもならなかった。

何故なら、そのドアはアリスの手がギリギリ入るくらいのとても小さいドアだったからだ。


「開けれたとしても、入れないじゃない。」


アリスはため息をついた。

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