19. さよなら林下。

【海人目線】


走って戻ってきた。



走って戻ってきた。とっさに直樹に頭をさげる。


「ごめん、直樹。」


「…いや、林下くん女の子に囲まれて見えなくなってただけだから(笑)

大丈夫。気にすんな。すぐカッとなった俺も悪かった。」


「ごめんね、ありがとう。」

「おう。」


とりあえず… 安心。と、林下がこっちに歩いてくる。


「かーいっとくんっ!」


後ろに手を組んではなしかけてくる。


「…?」


どうしたんだろうと顔を見上げる俺。


「やっぱ僕が間違ってたみたい。おじゃましました〜☆」


笑顔で言ってくる。ど、どど、どういうことだ...

と、とりあえず。今の状況でわかるのは... 反省はしていなさそうだ。


「あっ!僕の学校の名前ちゃんと覚えたっ?春ヶ丘高校...ネ!!

エクセレント学園より名前だっさいけどーっ!(笑)」


俺は「学校名を笑うな」なんて言う勇気も暇もないまま。林下は続ける。


「春ヶ丘でバスケに入ってたんだけど、バレーに入ることにするよっ☆

モテ度下がっちゃうけどね〜っ!あっ!僕なら下がんないかっ☆

んじゃ、みんなありがとねーっ!!!」


バレーの練習の準備をしていたみんなに呼びかける。

いちいち...うざい。


「えっ帰んの!?」


山口先輩がボールを片手で回しながら言う。


「早くね!?(笑) まあ、頑張れよ〜(笑)」


手を大きく振った山田先輩。


「また大会で会おうね。まぁ僕が勝つだろうけど...」


林下は俺の耳だけに聞こえる大きさでそう言い放ち、ニッと笑い、


「んじゃ、バイバイ!」


そう言って帰って行った。

今考えるともう少し小学生の頃の思い出話(いじめ以外の部分)を

しておけば良かったかなあ... なんて。ほんの少し思った。ほんの少し。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る