11. ゴリラ。

山田先輩が低い声で顔を近づけてくる。


俺が笑っただけでこんなに喜ぶなんて

正直びっくりしたし、なんだか...照れくさい。

慌てて俺は顔を隠した。



慌てて俺は顔を隠した。


--


「ぷっは〜〜〜っ!先輩ついでくだせえっ!!」


休憩時間。山口先輩がまた山田先輩と楽しそうにしている。

すると直樹が俺の隣にしゃがんだ。


「海人。話したいことがあるんだ。」


「ん?」


「俺、気づいてたんだ。俺のせいで海人が大人しくなったこと。」


直樹は下を向いて膝を床につける。


「ごめん。この通りだ。」


直樹は土下座をする。


「え、そこまでしなくて大丈夫だよ…!俺も直樹のこと頭の中では許してた。けど、なんかモヤモヤしたんだ。すげえ気持ち悪かった。」


シーンとなる。直樹が俺と背中を合わせる。

そして、やっとのように口を開く。


「俺があいつらに従った理由... 聞きたいか?」


続けて言う。


「あいつらの中の1人の父さんのとこで俺はバレーを習ってたんだ。」


「…うん。」


「んでな、あいつらが『バレーをやめたらいじめをやめてやる。』って。

海人の為ならって思ったけど…やっぱり…俺…」


止まって泣いてしまった。このまま泣いていたら目が腫れる。

周りのみんなは話していて気づいていないっぽい。

俺は向き合っていた直樹の背中の方を見て、そっと右肩に手を当てる。


「バレーをやりたかったんだよな。わかってる。大丈夫。」


「おう... ありがとな、(笑)」


直樹は泣きながら笑顔を作る。


「やっぱ俺、お前のこと尊敬する。俺とは違って直樹がいじめられたとしても、直樹はこんなふうにならず、強かったと思うんだ。バレーを考えてやれって言ってくれたのもお前だろ?...やっぱかっけー。尊敬。」


こんなこと言ったのも、言った後に自分でびっくりした。

すると、真島先輩がしゃがみこみ、直樹の顔を覗き込んだ。

直樹は慌てて涙を拭き、鼻をすする。


「じゅrrrrrrrrっg...じゅrっ...じゅrrrrr...」


「うおっ!?お前泣いてんのかあ!?!?

うおおおおお俺の胸で泣けええええ!!!」


しゃがんでいた真島先輩は立ってゴリラのように胸を叩く。

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