第6話『7つの宝珠』のリーダー

「ご報告します!現在我が軍は魔王軍を追い詰め、落城するのも時間の問題だと思われます!魔王も城での指揮に手一杯のようで、こちらに向かうようすもありません!」


「よし。ご苦労。引き続き前線のメンバーの指揮に移れ。魔王は強い。最後は俺が直々に相手してやる」


「了解いたしました!」


…よし…。

これならなんとかなりそうだな…。

我がギルド「7つの宝珠」にとって歴史に残る戦だ…。


リーダーとしてギルドを束ね、早6年。

俺は迫り来る歓喜の瞬間に酔いしれそうになっていた。


…といっても、俺が今しているのはネトゲだがな…。

まさか、ネトゲにここまで心奪われるとは…。


ウィル・アーノルド。

「7つの宝珠」を束ねる俺の名前。


ちなみに現実世界での名前は山田山雄。

まったく…つまらない名前だな…。


しかし、この世界での俺はまさに英雄!

刃向かうものは叩き潰し、様々な交渉にも打ち勝ってきた。

もはや、思い通りにならないことなどない!


そして…。


この魔王討伐クエストをクリアすれば、俺はたちまち有名人になるだろう。

もしかすると、テレビや新聞で取り上げられるかもしれん。

それほどこのゲーム…ワンスラの影響力は絶大なのだ!


よし!

クリアしたらゲームだけでなく、現実世界でもウハウハしてやる!



ワッハッハッハッハー!!






チュドーン!!…ボーン!!…ドドドドッ!!!






ん?

何やら後ろのほうが騒がしいみたいだが…。

パソコンの画面をもう少し見やすくなるよう、俺は後ろの方に視線を向けてみる…。



『敵エネミー発見!!敵エネミー発見!!魔王が現れました!!戦闘準備に入りましょう!』



無慈悲に映る敵エネミー接近の警告。

俺は自分で自分が信じられなかった…。



バカな…。

魔王には潜入スキルなどなかったはずでは…。

いや…そもそもやつは城にいたはず…。


そのとき、パソコンの画面にやつが…。

長いアルビノの美しい髪の毛にまがまがしい角や装飾…。

その姿を確認した瞬間、俺の周りは一瞬にして炎に包まれた。

そして…。




『 残念!!

クエスト失敗!!

レベルは大丈夫?次はもっと強くなろう! 』




画面が暗転し、クエスト未達成の表示とアドバイスが現れる…。





…なんだこれは…どういうことだ…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る