第4話「乙女の休日」
先日の土曜日のこと。
その日は1日中パジャマ姿のままで、だらだら過ごしていた。
休みの日に、予定もなく、やることもない。
これほどの至福の休日はないのだ。
好きなだけ寝てもいいし、好きなだけ映画をみてもいい、好きなだけ酒盛りしてもいい。
ベランダの手すりから、行き交う人々の歩く姿を、眺めてみる。
「せっかくの休みの日に予定があるなんて、大変だなあ」
「あの人はどこに行くんだろう」
「商店街はにぎわってるかしら」
などと、もの想いにふけってみる。
その直後に、お腹がすいていた事を思い出して、何を食べようか妄想スタート。
食べたいものが決まると、クックパッドの出番だ。
レシピを確認した後は、鼻歌まじりで料理にとりかかる。
さっきまで見ていたテレビの内容が気になり、
料理の合間合間に、自分の部屋へと移動して確認するので、
なかなか料理がはかどらなかったりね。
冷蔵庫には、昨日買いだめしていた缶ビールが入っていたはずだ。
と、なると、昼間から飲み出すのも悪くないな。
その前に、お風呂のお湯にゆっくりつかって、
リフレッシュタイムにしよう。
汗を流して、つまみと缶ビールを片手に、好きな動画をみる。
よしよし。今日はこの作戦にしよう。
眠たくなったら、そのまま寝ればいいや。
いつでもお昼寝できるように、ベッドだけ整えておくか。
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こんな感じで、1日を自分の好きなように過ごすことが、あたしは大好きだ。
私は、休みというのは本来こうあるべきだと常々思っているので、素敵な休日ライフを存分に楽しんでいた。
たまたまテレビをつけると「関ジャニの仕分け8」という番組がやっており、その日は、ミュージカルキッズと大人のミュージカルスターの歌唱力対決が流れていた。
双方の歌唱力、表現力に圧倒されつつも、
それ以上に、登場人物の心情を、歌と踊りで表現する「ミュージカル」というものの素晴らしさに非常に感動した。
また、圧倒的な表現力を身につけなければならない、ミュージカル俳優・舞台俳優の技術力の高さには、感心するばかりだ。
テレビでは、「アナと雪の女王」の1場面で流れる、「生まれてはじめて」が課題曲だったのだが、お城の外に出られる嬉しさと、素敵な出会いに期待するアナの可愛らしい心情が、見事に表現されていた。
今まで、「女性らしくしろ」という要求をことごとく、得意のへりくつで投げ返していたあたしも、アナの可愛さを見た瞬間、「女の子って可愛いもんなんだな。女の子らしくするのも悪くないかもな」と、早々に心変わり(笑)
26年間、ガサツ・乱暴口調・男勝りの3拍子がついた人生を送ってきたが、今後は女性らしく意識してみるのもいいかもしんない。
冷静に考えると、おれは女だしな(笑)
女の子なら当然抱くであろう、ドキドキ感やワクワク感が、アナの1場面に凝縮されており、見ているこっちも、たまらない気持ちになった(脳内では既にアナと踊りだしていた)。
いやはや、ミュージカルおそるべし。
どうやら、俺の女の子の部分が刺激されるキッカケになったようだ(笑)
大変なのは、ここからである。
あたしは昔から心ひかれたものを見つけると、しばらくそれ一色になってしまう。
土日の休み中は、ずっとミュージカル関連の動画をみていたし、
外に出かける時も、ミュージカル音楽をきいていた。
そして、ミュージカル音楽を聴くたびに、
おれは女の子になっていった(笑)
女の子になったところで、気になるのはやはり外見だろう。
いつもは、遅刻ギリギリに起床し、髪も服も気にかける間もなく出発していたが、月曜日はちょっとメイクに時間をかけて、髪なんかも巻いちゃおうかしら。
洗濯物の中から、適当に着ていく服をチョイスするのはやめて、明日は可愛い服でもコーディメイトしちゃおうかしら。
そもそも、最近飲みすぎて肌の調子も悪い。
今日は、久々にパックでもするか。
こんな調子で、土日に女の子に戻ったあたしは、休み明けの月曜日に存分に女の子としての自分を発揮するべく、気持ちを高めていた(笑)
結果
日曜日は
一睡もできなかった(笑)(笑)(笑)
その日は1時すぎに布団に入ったのだが、全く寝れない。
2時、3時と時間はどんどん過ぎ、
カアー カアー
カラスの鳴き声が聞こえたところで、
なんと6時をまわった。
この時点で眠ることをあきらめた(笑)
月曜日の惨事は、記すまでもなかろう。
ひたすら眠気との闘いにより、女の子どころか、闘いにやぶれた落ち武者のような形相で仕事をしていたあたしには、可愛らしさの「か」の字も当てられない状態となってしまった。
全てのはじまりは、土曜日。
何かにハマりだすと止まらなくなる性格が災いして、週明けの初日からかなりのダメージを受けることとなった。
疲労感がぬぐいきれない現在。
次の休日までの残り4日を、あたしは激務をこなしながら過ごさなければならなくなった。
今週の休みこそは、平穏に過ごせるように願っている。
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