第8話 大金
昼食前の屋敷ではちょっとした話し合いが行われていた。アリサとフシールあと俺の三人で低めのテーブルを囲んでだ。話し合いの内容は二つ、一つ目は今日の訓練の内容、まったく盛り上がらない事務的な話とフシールによるアドバイスでこの議題は終了。もう一つの議題は盛り上がりを見せた。
「で、この討伐報酬兼俺の初任給をどうするかという話になる」
卓上には風呂敷に包まれた札束の山が置かれている。いくらぐらいあるのだろうか。あとどこからこの金が支払われているんだろう。
「あんたが好きに使えばいいじゃない、この仕事のお給料なんでしょ?」
「うーん、俺あんまり金使わないから分からないんだよね」
「えっと、この紙で物を買えたりサービスを受けたりすることが出来てですね。このお札は最高額紙幣です」
フシールによる万札とは何かの説明が始まった。流石に俺でも金が何かは知ってるし会話の流れから察してもらいたいものなのだが……。
「ありがとう。でも、そう言うことじゃなくて結構な額の金を何に使うかという話だ」
「あ、そうだったんですか!? 私てっきり勘違いしてました。よく言われるんですよ『頭のネジが抜けてる』って」
ん?
手助けでここに来たんだよな。普通有能な人材が派遣されるんじゃないのか?
「ここに来るのが決まったときも良く分からないから質問しようと手を上げたら自分から志願したと思われてですねー」
照れ笑いをしながらそんなことを言っているが本当に大丈夫なんだろうか。
「戦闘はできるんだよな?」
「勿論です。植物を操って戦うんですよ、食虫植物みたいなやつです!」
食虫植物か、多分自分も食べられてんだろうな。
まあいいか、それより金だ。
「なあ、フシール。前のところではなにか買ってたりしたか?」
「あー、戦車とか買ってましたね魔法で動くやつ」
戦車?
俺の知ってるあれか、あの鉄板をつなぎ合わせた体に砲を載せてるあれ。
平和な日本で民間人が買えるものなのだろうか。仮に買えたとして公道を走ったらどの免許が必要になるんだろう。
「なんか分厚い本の後ろの方のページにリストがあってその中からいろいろ買ってましたよ」
「あんたそんなの持ってたっけ?」
アリサが不思議そうに聞いてきた。マニュアル見せたことなかったっけ。
「マニュアルなら部屋にあるぞ、枕にしようにも分厚すぎてできなかったんだよ」
「大事な本で何やってんのよ! 物の管理も出来ないの?」
アリサに怒られてしまった。
言わなければよかった、反省反省。
「あ、そうだ!」
「何よいきなり?」
「フシールの歓迎パーティーやらないか?」
そういえば、何もやってなかったな。仲間に加わるんだからパーティーぐらいやらないとだめだろう。我ながら良い提案ではないだろうか。
「良いわね、特に私には何もしなかったのにフシールにはするっていう特別感が」
「いや、も、もちろんアリサの分も含めてっていう意味だぞ。やだなー、俺が忘れてるとでも思ったのか?」
「勿論、思ったわよ」
「ご、ごめんなさい」
因みにこの俺とアリサのやり取りを見ていたフシール曰くとても仲が良いですねとのことだ。そんなことを言ってアリサが赤面したのは言うまでもない。
まあ何はともあれ、パーティーだ。
金も時間も場所もある。誕生日以外のパーティーなんて洒落たものは初めてかもしれない。
魔法少女をプロデュースすることになった件について 森田ムラサメ @morisinn
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