第7話 新しい生活

辺りには紙吹雪が舞っている。

嫌な記憶がフラッシュバックするがこれは訓練だ。アリサが戦闘中に自分で見出した糸をメインにした攻撃、それはまるで蜘蛛の巣のように上空に張り巡らされていてそこを通過しようとした人型がバラバラに散っていく。


この人型は前の戦闘のために作った空間から転送したものだ。

本体が消滅してしまった為かもう自力で動くことは出来ないらしい。


「凄いな、前見た時は死にかけだったからぼんやりしてたけどこんなに綺麗だったとは」


「まだまだよ。大体、これは相手が突っ込んでこないと意味無いじゃない」


「言われてみれば……」


「何か新しい技が必要ね」


「そうだな」


「そうだな、じゃなくって考えないさいよ!」


「お、おう」

人形と糸が使えるからな。上手く使えれば結構な攻撃が可能だと思うんだが。そうだな何かないだろうか?


あと相手の精神を操るのは対象によって効かないみたいだから原因を究明しないとな。


「じゃあ、操り人形出してそれに戦わせれば良いじゃないか」


「それこそ突っ込んで終わりよ。人形の攻撃なんてたかが知れているし」


駄目か。言われてみればそんな簡単なのならもう使ってるか。

うーん、普段こんなこと考えないから大変だな。何か良い技ないかな。


考えても出てこないな。

そうだな、なんかあるか?


「じゃあ、そこら中にトラップ仕掛けておいて一歩でも動いたら切れるって言うのは?」


「それは、良いかもしれないけど実験が必要ね」

そう言ってアリサは俺を見つめる。きっと頭の中で俺を切断しているのだろう。恐ろしい。そして次にいうことは恐らくこうだ。


「実験台になりなさい」


ほら。当然拒否だ。回復の仕方はまだ分からないが恐らく一回切れたら治らないだろう。そもそも治るからといって首だの手足だのを切断されたらたまったもんじゃない。流石にそんなことをする娘じゃないにしてもだ。


「嫌に決まってんだろ」


「じゃあ、次の実戦で試すわ」


「いいけど次の戦いは近くのブロックの担当者が手伝うことになったらしいぞ」


「何よそれ? そんなの聞いてない!」


「言い忘れてたか? まあ今言ったからいいじゃないか」


「良くない。もし知らずにトラップなんか仕掛けてたら血の海よ」

確かにそうだ。そんなスプラッタみたいなのは見たくないし、そんなことするアリサも見たくない。まあそんなことしないとは思うが。


新しく作った空間の寿命が近づいてきているようだ。

段々と空が壊れ始め何もない大草原が徐々に剥がれてきている。もう少し終末が訪れたようになるらしいが危険なので撤退することにしよう。


「アリサ、帰るぞ」


「分かった」


いつもの扉を開くと屋敷に通じた。

もう夕方の様で空は赤くなっている。明るい赤に幾筋かの雲が映える。なかなか綺麗な光景だ。屋敷の壁も空を吸い込んだかのように明るく染まっている。そして何やら扉の前に人がいる。


アリサでも俺でもない誰かだ。

この空間へ来れる人間がいるとは思えないが一体何者だろうか。


「あれは、誰だ?」


「知らないわよ。あんた行って見てきなさい」


ふわふわと飛行しながら屋敷の入り口に近づく。段々と影もクッキリとしてくると人物がどれくらいの大きさなのか分かってくる。恐らくアリサと同じくらい。とすると魔法少女か?


「こんにちはー。屋敷の持ち主ですけどここで何を?」


「は、初めまして。その、えっと。ほら、支援がどうのこうの言うのの報告に来ました。フシールって名前で活動してます」


なるほど、フシールか。白髪ショートカットにセーラー服を着ているちょっと頼りない感じの子だ。まあ強いんだろうけどね。


「あ、どうも。それで報告というのは?」


「はい、今後の戦いには私が参加します」


「それはとても助かるけど、どこら辺の地区から来たの?」


「それは秘密です。なお、条件としてある程度人数が揃うまでの参加というのと、もし不手際で全滅ということになったら我が主がこの地区を守りますのでご安心をということです。納得いただけますか?」


全然頼りなくないじゃないか。しっかりしてる子だったのか。

「という風に言えと言われてたのでこれで任務完了です!」

前言撤回だ。頼りないというか抜けてる。


「え、良いけど、全滅なんてあり得るのか?」


「さあ? 私もほとんど聞いたことないですね。あ、あとこの屋敷で面倒見てもらうことになっているのでよろしくお願いします。あまり上手ではないですが炊事洗濯掃除、なんでも頑張りますので!」


「あー、それなんだけどほとんどのことはうちのアリサがやってるからいいよ」


「この屋敷全部の掃除とかをですか?」

心底驚くフシール。もっとも頑張っているのはアリサではなくアリサの出した操り人形なのだが、まあ炊事はアリサが自分で何か作ってくれるからそこは本人の頑張りだろう。とても助かっている。


「そうよ、私が全部やってるわ」


そういって得意気にアリサが入ってきた。若干語弊があるような気がするがまあ仕事をしていない訳では無いから良しとしよう。


「そうでしたか。アリサさん、これからよろしくお願いしますね!」


「こちらこそ。よろしくお願いします」

アリサはあまり反応が無かったせいか若干元気を失っているように見えた。


「それでは改めまして、新しいマスターさんよろしくお願いします!」

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