第3話 婚活ロック
獣道のように土肌が露出している中を、馬はカポカポと歩いていく。騎士的な人に連れてこられたのは、林の中にあるロッジのような建物だった。これが彼の言っていた『詰め所』ということらしい。扉を開けると、ころろん、という木鈴の可愛らしい音がした。
中にいたのは、やっぱり中世ファンタジーな感じの――ゆったりしたヘンリーネックシャツの腰あたりを紐で縛って、折り返しのあるブーツの中にズボンを入れ込んでいるような、そんな服装の男たちが、ぱっと見で二人。わたしを連れてきた人はがっしりした甲冑を着たまま、わたしのすぐ後ろに立つ。
逃げられないように、だろうなあこれ。警戒されてるのはわかるけど、やっぱり気分は良くない。
だいたいどうして手ぶらのわたしが警戒されるのかもわからないし。
「……サァ?」
「さわか、よ」
どうもわたしの名前はうまく発音できないらしく、何度か繰り返し聞かれてはそれを訂正する。
詰め所とやらに放り込まれてわたしが最初にしたことは、自己紹介だった。
実際のところ、状況ひとつとってもさっぱりよくわかっていないので、わかることから整理できる時間をもらそうなのはありがいんだけれど。
すごく大雑把に自分のことを紹介するなら、女、アラサー、婚活中。
女、はさすがに問題なかったが、あとの二つが問題だった。
「あらあー?」
「三十歳前後って意味よ……」
「こんかつ」
「……結婚相手を探しているっていう意味よ」
そう答えた途端、男たちがざわついた。
「け、結婚?」
「三十路前後で!」
「正気ですかあなた!?」
目を白黒させた男二人に続き、騎士的な人が一番失礼なことを言ってきた。
かちん、と来て睨みつけたけれど、水色髪の男はまったく悪びれる様子もない。それどころか、恐ろしいものを見た、という顔でわたしの肩を掴んでくる。
「30と言えば僕の母と同じ歳だ、孫だっていてもおかしくないでしょうに、何を言い出すんだ!?」
…………ぱーどぅん?
「い、一応、わたしまだ28なんだけど」
「二つしか変わらないじゃないですか」
絶妙にぎりぎり三つかもしれないじゃない。
いやそういうことじゃない今はそういうことじゃなくて孫って!
絶句するわたしを尻目に、男二人もうんうんと頷いていた。
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