欠陥欠落

YU

欠陥欠落

彼が指名手配されてから2週間ほど経っていた

山奥で自殺していたらしい

彼ならそうするような気がしていた

彼は責任というものが嫌いだったから


いつだったか、彼は「生物は死ぬ時が一番きれいだと思うよ」と言っていた気がする

この無差別殺人もその言葉の延長だったのかもしれない

俺は最後まで気が付くことができなかった


都会でもなければ田舎でもない、俺はそこで暮らしていた。彼と会ったのは高校に入ってからで、1年と3年の時だけ同じクラスだった気がする。実は小学校も同じだったらしいが俺は全く気が付かなかったし今でも思い出せない。彼は親の都合でかなり転校を繰り返していたらしい。だからか、友達も居なかったと言う。

なぜ彼と友達になったのかは思い出せないが、たぶん彼がいつも一人なのを気にかけて、だったと思う。

俺は心優しい人間でありたかったから


今こそ無差別殺人で犯罪者だが彼はいたって普通の外見だった。もちろん言動も。

だけど信頼した相手にしか本音は言わないと言っていた。なんだろうな、きっと心を病んでいたんだと思う。だから余計に見放せなくなった。むしろ彼なら俺を頼ってくれるかもしれない。そう思った。でもどこかで彼を見下すことで今の立場に安心している自分もいた。

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欠陥欠落 YU @naduki-iori

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