第3話 なまけものリーダー
エミリー・ノースロップ。
彼女はアメリカ出身だ。
日本での生活に憧れ、日本の大学で四年間を過ごし、卒業後この会社に入社した。
なぜこんな人が入社できたのか、俺は不思議に思う。
なぜならうちのリーダーは仕事をしないのだ。
「おスシは私の大洪水デス」
「なんで寿司で大洪水起こすんですか。大好物って言いたいんですよね?」
「オーそれデス! さすがは期待の新星デス!」
「日本人なので。ていうか、日本語の勉強も大事ですけどちゃんと仕事してくださいよエミリーさん」
「チッチッチ。なめてもらっては困るゼ少年。私はこう見えてもリーダーなのだゼ」
「はい。知ってますけど」
エミリーさんはその場でくるりと一回転する。輝かしい金髪が空を舞う。
「リーダーとはチームをまとめる重要な役割デス」
「はい。その通りです」
エミリーさんは再びその場でくるりと一回転する。またもや輝かしい金髪が空を舞う。
「このチームはもう一丸になっているから私の出番はないのデス」
「あんたがチームの輪を乱してるから!」
「ぐ〜るぐ〜るぅ」
椅子の上に女の子座りをし、自ら椅子をくるくると回して遊び始めるエミリーさん。
俺の話は聞く気はなさそうだ。
そんなエミリーさんを見かねたのか、沙織さんが立ち上がり、椅子の背もたれをガシッと掴んで回転を止めた。
「エミリー。いくらなんでもひどくないかい? 仕事はしなくても、新人の相手はちゃんとしてやれ」
「いや俺に構わず仕事してくださいよ!」
「分かったデス。私だって新人のオムツを取り替えるくらいのことはできますデス」
「俺を赤ん坊扱いするな! もう助けてくださいよ、睦美ちゃん」
「ひぇっ⁉」
ビクッと身体を震わせた睦美ちゃん。
ゆっくりと立ち上がり、恐る恐るエミリーさんの肩を叩く。
「あ、あの……エミリーさん……」
「なんデスか? むっちゃん」
「く、クッキーあげるので、ちょっと仕事してください……」
「ワーオ! アイラブユー!」
エミリーさんは全身で喜び、睦美ちゃんに思いっきり抱きつく。
エミリーさんの豊かな胸を顔に押し付けられた睦美ちゃんは湯気が出そうなくらいに顔を真っ赤にして驚きを隠せずにいた。
すると隣に立っていた沙織さんがその光景を見ながらコクコクと頷いている。
「どうしたんですか?」
「百合もアリだね」
「守備範囲が広すぎる……」
「むっちゃんは少しばかし恥ずかしがり屋だし、エミリーはお寿司大好きだし」
「なんでちょっとラップ調になってるんですか」
「私は興奮するとラッパーっぽくなってしまうんだチェケラ」
「初耳だよ!」
「ちなみに私は興奮すると仕事をしなくなりマス」
「いつもだよ!」
「ち、ちなみに私は興奮すると……アニメが見たくなります……」
「初耳だ……よ?」
マジなのか? アニオタだったの?
「どうしたんデスカ? 鳩がベイクドビーンズを食ったような顔をシテ」
「アメリカンなことわざだね」
「褒められたデス。褒められたら眠くなりヤシタ。寝てもいいデスカ?」
「エミリーさんダメです。仕事してください」
「えーイジワルデスネー。ジャパニーズは仕事しすぎデス。もう少し気楽にやろうという心のヨユーを見せ――」
キーンコーン……キーンコーン。
「あ、お昼タイムデス! ゴハン〜ゴハン〜!」
エミリーさんは陽気に歌いながら、颯爽と部屋を出ていった。
逃げられた……。
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