第21話 キームン オリエンタルな香り

 中国の農産物と聞くと、あからさまにイヤな顔をされる事が多々ありますが、この『キームン』に関してはそういう心配は必要無いでしょう。


 と言う事で、今回取り上げるのは、『キームン』という中国の紅茶になります。


 中国の安徽省あんきしょうという、ちょっと内陸に入った所の省の、祁門キームンという市で生産される紅茶です。そのためその土地の名が付いて、キームンと言われています。発音によって『キーマン』『キームン』『キーモン』など、色々と呼ばれていますが、どの言い方でも大丈夫です。


 世界三大紅茶のひとつに上げられ、『中国紅茶のブルゴーニュ酒』と讃えられるほど香り高いものです。その香りは、蘭の花の香りとも焼けた薪の香りとも表され、とても芳しいです。


 ちょっとお話が変わりますが、以前私が働いていた会社にて、朝に事務所を清掃していた所、ふわっとキームンの香りが漂ってきました。

「えっ? 紅茶があるはずないのに、なぜ?」

 振り向いた私の背後にあったのは、取引先から頂いた蘭の鉢植え。そう、蘭の花の香りをキームンの香りと勘違いをした訳なんです。そのくらい似ているのです。


 その香りに反し、味わいは軽く渋みも少なく、スイスイと飲めてしまいます。そのため、ミルクや砂糖は入れず、ストレートで味わうのが良いでしょう。


 さてこのキームン、その品質によって、超特級・特級~二級云々までわけられるそうです。その超特級のキームンは、一般消費者ではまず味わう機会は無いようです。なぜなら、中国で国賓クラスの人物にしかプレゼントされない、最高級の贈答品として扱われるからとか。そのため品質管理はしっかりとしていて、残留農薬や添加物などは一切付いておらず、保存もちゃんとしているそうです。


 とは言え、普通に流通しているキームンも、もちろん美味しいです。ただ、ランクが低くなるにつれ、蘭の花の香りからだんだんと薪を燃やしたスモーキーな香りに変化していくとの事ですので、そこは召し上がる個人の好みによるかと。ランクの低いものについては、ミルクティーにするのも良いですね。


 オリエンタルな香りを感じつつ、紅茶の歴史に思いを馳せる。そんな時には最適な紅茶だと思います。ティーバッグではあまり出回っていませんので、専門店にてお召し上がり下さい。





 ちなみに、トワイニングのブレンドティー『プリンス・オブ・ウェールズ』には、このキームンがブレンドされているとの事。身近で手に入りやすく味も良いのはこれですので、お試しするならこれで…でしょうか。

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