第16話 アールグレイという魔力

 今回は、紅茶の中でも王道とも言うべき、「アールグレイ」という紅茶についてお伝えして行こうかと。お付き合い、宜しくお願い致します。


 まずアールグレイという紅茶ですが、これは原産地名でも品種でもなく、イタリア・シチリア産の『ベルガモット』という柑橘の果皮から取った香りを、紅茶に吹き付けて香り付けしたものの総称を指します。ようはフレーバードティーの1種なんです。




 時は1830年代、当時のイギリスの首相であった二代目の『グレイ伯爵』。彼がたまたま中国から手に入れた紅茶、これが竜眼(ライチを小さくしたようなフルーツで、白い果肉が特徴)にも似た香りをしていて、それがとても美味しくグレイ伯爵が気に入って、「似たような紅茶を作ってくれない?」と色々な紅茶メーカーに依頼します。


 しばらくして、『トワイニング』と『ジャクソン』という紅茶メーカーが、上記のようなベルガモットの香り付けをした紅茶を持ち込み、グレイ伯爵はこれも気に入ります。そして「私の名前を付けて売り出していいよ」と許可を出します。そのため、日本語の伯爵は英語のアールとなりますので、そのまま『アールグレイ』と名付けられた訳です。




 基本的にはどんな紅茶にでもこの香りを吹き付ければ、アールグレイとなります。ただ基本のレシピですと、中国紅茶のキームンに香り付けしたものが、本式となっているようです。


 紅茶の専門店に行きますと、様々なベースの紅茶に香り付けをしたアールグレイが販売されています。セイロン紅茶に付けて『セイロンアールグレイ』、ダージリンに付けて『ダージリンアールグレイ』、などなど。通常の紅茶メーカーでアールグレイを出す場合、そのメーカーがブレンドした紅茶をベースに使用しているようです。


 また最近は、紅茶にベルガモットの香りを吹き付けた上に、レモンやオレンジの乾燥果皮や矢車菊の花びらをブレンドしたものが販売されています。トワイニングですと『レディグレイ』、ロンネフェルトですと『プリンセスグレイ』が代表的かと。こちらはアールグレイの1種ではありますが、また違った香りと味わい感じられるでしょう。購入する機会がありましたら、是非お試しを。




 余談なりますが、アールグレイの香りが苦手という方々もおられるかと。化粧品クサイってね。その場合は、アイスティーに仕立てるのも、ひとつの方法です。香りの成分は熱で揮発するものですから、冷やすと香りも抑えられます。アイスティーにすること前提で、きつめに香り付けされたアールグレイもあるくらいですから。


 香り確認できる専門店でしたら、まずは香りの度合いを確認してから、購入することをお勧め致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る