再びクイーンリリーの城へ

 翌日。

 コギトは、いつも通りロブとハナよりも早く起きた。いつも通り無印流剣術むじるしりゅうけんじゅつと無印流古武術の訓練を行い、『シルバーバトン』と『シュトロームソード』の手入れを軽く行った。

 丁度手入れを終えたところで、ロブとハナが起きて、ロブは『拳銃』の、ハナはプレートメイスの手入れを行った。

 朝食はやはりカレーライスだった。コギトは嬉しそうに、ロブとハナも、嬉しそうというわけではなかったが、文句を少しも言わずに食べた。

 

 朝食を食べ終えた後。 

 「さて、あの人に挨拶しとかないと……」

 荷物を纏めながららコギトは呟いた。

 「あの人?」「あの人?」

 「クイーンリリー」

 「ああ……、コギトそっくりだっていう人?」

 「そ、……メロディーも五つ集まったし、それで少しでも歌を思い出せないかな、って思ってね」

 コギトはそう言うと、荷物を纏め終えた。

 

 その三時間後。

 コギト達は、ピンク色の城の前にいた。

 城の前には、相変わらず門番が立っていた。

 「あっ、どうも」

 真ん中の門番は、コギトを見るや否や、ペコリと頭を下げた。

 「今日こんにちは、門番さん。あの、クイーンリリーに謁見したいのですが……」

 「ああ、勿論構わないが……、その二人は?」

 門番は、

 「私の友達です。こっちが……」

 「ロブです、初めまして」

 「それで、こっちが……」

 「ハナです、同じく、初めまして」

 ロブとハナは、紹介された順にペコリと頭を下げた。

 「そうか。では、通るがよい」

 真ん中門番はそう言うと、左右の門番と共に道を開けた。

 「では、失礼しますね」

 「ああ……」

 コギトは一言ことわって、ロブとハナを連れて門番の脇を通った。ピンク色のオブジェクトが並ぶ庭を通り抜け、城の扉を開けて、中に入っていった。

 

 「……なんだか、きれいだけど、寂しい場所ね、ここ」

 城の中に入ったハナは、そんな感想を抱いた。

 城の中は、外のピンク色の世界とうって変わって、壁は純白、床は磨き抜かれた翡翠色だった。壁、床共に、彫刻は一切無かった。

 「……そうだね。ここを、ずーっとまっすぐに行った所に、玉座の間があるんだ」

 コギトはそう言うと、進み始めた。

 ロブとハナも、それに続いた。

 

 「……やっぱり、駄目みたい」

 クイーンリリーは、ゆっくりと首を横に振った。

 「……やっぱり、全部集めないと思い出せない感じですか?」

 これまで集めた歌の断片を繋いで作った歌を歌ったコギトは、首を傾げて言った。 

 「ええ……、たしかに、私が思い出せない歌は、コギトさん達が集めた歌だと思うのですが……、それでも、やっぱり思い出せないの」

 クイーンリリーは、悲しそうに言った。

 「……そうでしたか……。私達は、これから井戸の底で眠っているドラゴンに会いに行こうと思っているのですが……」

 「まあ!それなら、ドラゴンの甲殻を使った武器が、出来上がっているのですね?」

 「はい」

 「見せてちょうだい」

 「わかりました。……ロブ君、ハナちゃん、ちょっと下がって」

 「あ、うん」「りょうかい」

 ロブとハナは短く返事をすると、四歩下がった。

 コギトは、それを見て、左腰に差していた、刀身は純白で、光の加減で空色の光を反射する『シュトロームソード』を右手で抜いた。

 「これが、私だけの剣、流れる龍の剣『シュトロームソード』です」

 「……素敵な剣、ですね」

 「ありがとうございます」

 コギトは一言礼を言うと、『シュトロームソード』を鞘に納めた。

 「……ドラゴンは、今まであなた達が戦ってきたどの敵よりも強大な存在です。あなた達の持てる力を全て、出し惜しみなく使って戦いなさい」

 クイーンリリーは、凛とした表情で言った。

 「はい!」「はい!」「はい!」

 三人は、揃って返事をした。

                 ―続く―

 

 

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