第七章 魔法の国再び  

桃色の国再び

 「……う」

 コギト達が目を開けると、そこは、

 「また戻ってきたのか……」

 そこは、桃色の世界だった。地面は、雲なのか、それとも違う物なのか、よくわからない桃色の物体で覆われていた。

 コギト達が立っていたのは、川の中州にある小島だった。一つだけ、橋が架かっていた。川は、エメラルドグリーンに輝いていた。

 「ここは……?」

 ロブが呟いた時だった。

 「やあ」

 誰かが声をかけた。

 コギト達が声がした方を見ると、そこにいたのは、

 「長い黒髪のおねいさんは、また会ったね。僕は泳ぐ猫」

 「今日こんにちは。また会いましたね」

 「……おや?」

 泳ぐ猫は、ロブを見て首を傾げた。

 「な、何ですか……?」

 「君はちょっぴり弱いみたいだね」

 「うっ……」

 「そんな君には、コレをあげるよ」

 そう言うと、泳ぐ猫はどこからともなく包み紙に包まれた丸い何かを取り出して、ロブに差し出した。

 「……これは?」

 ロブは、何かを受け取って聞いた。

 「それは不思議なキャンディ。弱い子が舐めると、ちょっと強くなれる不思議なキャンディだよ」

 「またまた、そんな話あるわけ……」

 「ここは夢の国マギカンティア。皆の夢が、叶う国。さあ、舐めてごらん」

 「…………」

 ロブはおそるおそる包み紙を広げると、ピンク色の飴玉が出てきた。

 「……えいっ!」

 ロブは、思いきって飴玉を口の中に放り込んだ。コロコロ、と口の中で飴玉を転がした。

 「……なんだろう、ちょっとだけ、力が沸いてくる気がする」

 「でしょ?じゃあ僕はこれで。あ、そうそう地面を泳ぐ猫を見かけたら、泳ぐ猫がよろしく言っていたって」

 泳ぐ猫はそう言うと、地平線に向かって泳いでいった。

 コギト達は、泳ぐ猫が見えなくなるまで見つめて続けていた。

 

 「コギト、ここが前に言っていたマギカンティアなの?」

 歩きながら、ハナがコギトに聞いた。

 「うん。たしかに、マギカンティアだね。……そうだ、あの宿屋に行こう」

 「あの宿屋?」「あの宿屋?」

 

 「今日はー……」

 コギトは、宿屋のドアを開けた。

 「はーい、いらっしゃーい……あら、コギトさん!お久し振りね!……それと、そちらの方は?」

 「お久し振りです、女将さん。こちらは、私の友達の……」

 「ロブです」

 「ハナです」

 「まあ、お友達なの!」

 女将は、両手をぱちん、と合わせた。同時に表情がぱっと明るくなった。

 「はい。あの、今日も宿泊をしたいのですが……」

 「もちろんいいわよ!……腕によりをかけなくちゃ!」

 女将はそう言って、腕まくりのようなジェスチャーをした。

   

 「さあ、コギトさん、ロブ君、ハナちゃん、召し上がれ!」

 女将は、どこか楽しそうに言った。

 夕食に出されたのは、カレーライスだった。

 「えっと、これは……?」

 ロブが、カレーライスを覗き込んで聞いた。

 「カレーライス。私の一番大好きな食べ物」

 コギトが、嬉しそうに言った。

 「ライス……?」

 ハナが首を傾げた。

 「お米の事……って言ってもわかんないか。私の世界には、お米っていう穀物が主食の地域があるの」

 「この白い粒が、お米?」

 ハナが言った。    

 「そうそれ。カレーはそうだな、ざっくり言うと、香辛料っていう、辛い調味料を何種類も混ぜて辛いトロッとしたスープで、これの場合は、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、あと豚肉を入れてあるやつだね」

 「へえ……」

 ロブが、感心した様子で呟いた。

 「ま、口に合うかは、食べてみてからだね。食べよう」

 コギトはそう言うと、

 「いただきます」

 小さく呟いて、カレーライスを口に運び始めた。実に嬉しそうだった。

 ロブとハナは、少しの間目を瞑って祈り、目を開けて食べ始めた。

                 ―続く―

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