遺跡とうさぎさん

 「おい、おい……、嘘だろ、動けよ。動けよなあ、頼むよ……」

 ロブが、半泣きで言った。操縦席で頭を抱えた。

 「ロブ君、もう諦めよう、ね?」

 コギトがロブの肩に手を置いて言った。

 「うわああああ……!」

   

 「さ、気を取り直して、遺跡の探索でもしよ」  「ぼくのせんしゃ……」

 「いつまで泣いてるのよ……、ほら行くわよ」

 ロブは、ハナに引き摺られるようにして歩いた。

 暫く歩いていると、

 「お……、階段?」

 コギトが、行く手に階段を見つけた。

 「どうする?下りてみる?」

 コギトは振り返ってロブとハナに聞いた。

 「見に行ってみよう」

 なんとか立ち直ったロブと、

 「ロブ君に同じー」

 ロブを引き摺るのを止めたハナが言った。

 

 コギトとロブとハナが階段を下りると、妙に力が抜ける音楽が流れてきた。

 「な、何だこれ……」

 「気が抜けるというか、何というか……」

 「変な楽曲ね」  

 三人が、それぞれに感想を述べながら歩いていると、

 「…………」

 三人の前に、兎の顔に二本の足が生えたが何かが現れた。右耳にリボンを付けていた。

 「ぼくらはいつもげんきですけどこんにちは。じぶんはうさぎさんというものですよ」

 「喋った!?」「喋った!?」「喋った!?」

 三人は驚いた。

 「ぽえーん」

 うさぎさんと名乗った何かは、とことこ、と右に曲がる通路に歩いていこうとして、

 「あ、こっちはいきどまりですよ」

 そう言い残して、通路に入った。   

 「何だったの、あれ?」

 ハナがコギトに聞いたが、

 「わかんない。あんなのは、見た事ない」

 コギトは首を振った。

 「いや、あんなのいたら色々大変な事になると思う……」

 ロブもそれに同意した。

 「とりあえず、進もうか」

 「そうだね」「そうね」

 コギト達は、気を取り直して歩き出したのだが、

 「ぷー」

 二人目のうさぎさんが現れた。

 「また出た」「また出た」「また出た」

   

 「あなたわたしすこしにている」

 うさぎさんがハナを見て言った。

 「わ、私?」

 「だからこれりぼん、やる」

 「あ、ありがと……」

 ハナは、三人目のうさぎさんの右耳からリボンをほどいて、

 「……三つ編みでいっか」

 ハナはそう言うと、右耳の側の髪の毛を一束纏めて三つ編みにして、リボンを結んだ。

 

 「そうだ、からだあるうさぎさん、たべたですよね?」

 四人目のうさぎさんが、コギト達に聞いた。

 「あ、う……、はい」

 コギトは、言いにくそうに答えた。

 「おいしかったですか?」

 「……おいしかったです」

 「ならいいんです」

 

 「そーそー。きみたち、なまえあるですか?」

 五人目のうさぎさんが、コギト達に聞いた。

 「えっ?私は、コギト。コギト・コーディ。」

 「僕はロブ。ロブ・オコナー・ターナー」

 「私はハナよ」

 「みんないいなまえ!ぼくたちみんなおなじなの。みーんなみんな、うさぎさんなんです」    五人目のうさぎさんは、体を揺らしながら言った。 

 

 「……いい人達だね、うさぎさん達」

 コギトは、歩きながら呟いた。

 「人?」「人?」

 ロブとハナは、首を傾げた。  

 「うん……あれ?」

 コギトは、ポカンとした表情をした。

 「どうしたの?コギトさん」

 「あれ……」

 コギトが指さした先には、高さ三メートル、ピンク色の、巻き貝のような何かがあった。

 「……何あれ」

 ハナが首を傾げていると、

 「皆、手を繋いで」

 コギトは、右手でロブの右手を手を握った。

 「え?……うん」

 ハナはコギトの左手を自分の右手を握った。 「行くよ……」

 コギトは、巻き貝に向かって歩き出した。巻き貝の目の前で止まって、額を巻き貝に付けると、意識を集中した。 

 瞬間、世界はピンクに染まった。

                 ―続く―

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