戦車v.s.巨大ロボット

 コギト達三人が一軒家に戻ると、

 「よ、戻ってきたか」

 老人が、三人に話しかけてきた。その後ろには、

 「…………」「…………」「…………」

 三人が唖然とさせる巨大な物があった。

 分厚い装甲がなされ、足は無限駆動、長い筒が伸びたそれは、

 「戦車だあああああああああああああああ!?」

 コギトが叫んだ。

 「何それ?」

 ハナがコギトに聞いた。

 「え、えっと、武装、装甲がなされた車体にキャタピラーを付けた、戦闘用車両の事。そこの……大砲って言えばいいのかな?が主な武装かな」

 「へ、へえ……、ん?ロブ君?」

 ハナがロブの方を見ると、

 「わ、わあ……!」

 ロブは、恍惚とした表情を浮かべていた。

 「ろ、ロブ君?」

 コギトがおそるおそる名前を呼んだが、

 「戦車だあ……」  

 全く聞こえてなかった。

 「……い、イイモノって、これ、ですか?」

 ロブが老人に言った。

 「勿論だ。コレを、お前達に貸してやる」

 「本当ですか!?」

 ロブの表情が、これ以上ない程に明るくなった。

 「え、でも私達操縦の仕方なんて……」

 コギトが言いかけて、

 「僕は出来るよ?」

 ロブがそれを遮るように言った。

 「うそーん……」

 コギトは、あんぐりと口を開けた。

 「決まりだな。……くれぐれも壊すなよ?」

 老人は、楽しそうに言った。

 

 草原を、この世界ではまずあり得ない物体が、戦車が、ゆっくりと走っていた。

 キャタピラーで短い草を踏み潰しながら、ゆっくりと走っていた。

 「これは、いい!実にいい!」

 ロブが興奮した様子で言った。

 「ロブ君が壊れた……」「ロブ君が壊れた……」

 コギトとハナが、顔をひきつらせながら言った。さらに、表情が青ざめていた。

 「そういえば、これって砲弾って撃てるようになってるの?」

 コギトが気を取り直してロブに聞くと、

 「え?……あ、撃てるね。やってみる?」

 「遠慮します!」

 そんな、あまり実の無い会話をしていると、

 「ん?なんだ、あれ」

 何か人工物が見えてきた。  

 人工物は、建物の跡のように見えた。

 「なんていうか、遺跡、だね。って!?」

 「どうしたのコギト!?……あっ!?」

 コギトとハナが見つけたのは、全長四メートル、人型で、青い寸胴のような巨体を持つ、

 「ロボット!?」「ロボット!?」「ロボット!?」

 三人の声が揃った。

 ロボットは戦車に気付くと、戦闘態勢を取った。

 「へえ……。ヤル気なんだあ……」

 ロブの目が妖しく光った。

 「い、嫌な予感……」「い、嫌な予感……」

 「上等だ!吹き飛ばしてやる!コギトさん!ハナちゃん!応戦するぞ!」

 ロボットは、拳を戦車に降り下ろしたが、

 「効かないねえ」

 戦車は全く損傷しないどころか、むしろダメージを跳ね返しているようだった。

 「主砲よーい!てえぇっ!」

 ロブはそう言って、主砲を発射するスイッチを押した。

 ずどおん。

 至近距離で放たれた砲弾は、ロボットの胴体を大きくへこませた。

 「ハナちゃん、次!」

 ロブはそう言うと、ハナを操縦席に座らせた。 「そこの赤いスイッチ!」

 「へ、これ?」

 ハナは、言われるがままに赤いスイッチを押した。

 ちゅどおん。

 もう一度至近距離で放たれた砲弾は、全く同じ場所に命中してロボットをのけ反らせた。

 ロボットは、ギ、ギギ……と機体を軋ませながら拳を降り下ろした。

 「意味無いって言ってるよねえ?」

 ロブが、ロブらしからぬ気味の悪い笑みを浮かべながら言った。

 「止め――――――――――――――――!」

 ロブは叫びながら、主砲の角度を調整して、発射のスイッチを押した。

 ずどがあん。

 ギギギ、ギ、ギ……、ギ、

 プスン。

 ロボットはポンコツになった。

 それと同時に、

 「あ、あれ?」

 戦車もポンコツになった。

                 ―続く―

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