釣り針の意味

 コギト達が、玉座の間から退出しようとした時だった。

 「あ、そうそう、井戸の底で、大きな鮫と戦いませんでしたか?」

 クイーンリリーが、思い出したかのように言った。

 「え?ええ、はい」

 コギトは、生返事をした。

 「その時に、翡翠色の釣り針を拾いませんでした?」

 「あー、たしかに、拾いましたね」 

 コギトはそう言ってリュックサックを降ろすと、中からプラスチックの小さな箱を取り出した。箱を開けて、中から先端が尖っておらず、磨き抜かれた鉱物のような光沢を返す翡翠色の釣り針を取り出した。 

 「これが、どうかしたのですか?」

 コギトが、釣り針を自分の目の高さまで掲げて聞いた。

 「……言い忘れていたのですが、その釣り針さえあれば、いつでもマギカンティアに帰ってこれるのです。……疲れたら、いつでも帰ってきてくださいね」

 「へえ……この釣り針にそんな力かあったのですか。わかりました。本当に危なくなった時には、ここに戻ってきますね」

 コギトはそう言うと、翡翠色の釣り針をプラスチックの小さな箱にしまい、箱をリュックサックにしまった。

 リュックサックを背負って立ち上がると、三人は今度こそ玉座の間から退出した。

                 ―続く―

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