第3話 石屋川

かつて六甲山から切りだされた御影石を加工する石材屋が川沿いに軒を連ねていました。山麓から河口までの距離が極めて短い急流で、中流域は天井川となっています。川沿いに遊歩道や公園が整備されています。


鉄道が陸蒸気と言われた時代、大阪・神戸間で鉄道を建設する際、芦屋川・住吉川・石屋川の3河川は天井川となっていたため、川の下に鉄道を通すことになりました。最初に開削されたのが石屋川で、鉄道は明治7年開通しました。現在は高架になっており往時の姿を拝することはできませんが、この石屋川隧道こそが日本で最初の鉄道用トンネルであります。現在はかつてトンネルのあった場所にひっそりと記念碑が建てられています。


野坂昭如の『火垂るの墓』で神戸大空襲の際、清太・節子兄弟が空襲の中逃げ出してきた川が石屋川で、一息ついた清太と節子が見渡した焼け野原にぽつりと残っていた公会堂はこの川沿いにあります。現在も残る御影公会堂は阪神大水害、太平洋戦争、阪神・淡路大震災と3つの惨劇を生き延びてきた歴史の証人であるのです。


私には、石屋川といえば、川より市電の石屋川線の方が、馴染みがあります。王子動物園に連れて行ってもらうのはこの線でした。


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