第5話

ビルの入口の上空には、大量のムクドリが飛んでいた。きりんは感じてるものがあるらしく、


「熱い奴等やなあ。」と呟いた。


じょんれのんは、みきりんとマネージャーに挨拶した。スタッフはすでに全員別室で待機してもらっている。


みきりんがレコーディング室に入って歌い始めると、みきりんの後ろで女性が歌い始めた。みきりんとじょんれのんには女性の声だけが聞こえていた。きりんにはみきりんの後ろで歌う女性がはっきり見えている。


こきもりんストラップからきりんが現れると、女性の霊は驚いた様だがすぐにきりんに一礼をした。その瞬間、みきりんとじょんれのんにも女性の霊が見えるようになった。


「あんたどうしたんや?」


女性の霊は、オーディションで最終候補になったものの、事故を起こして亡くなったことを説明した。


「そら気の毒やなあ。」


「もう悔しくて、悔しくて、悲しかったんですが、自信があった訳ではないし、自分が悪いのもあったので。でも........」


「でも?」


「ムクドリ達がやって来てくれて、歌って欲しいって言ってくれたんです。」


「外にいたムクドリね。」


「ずっと毎日駅前で歌ってたんです。でも、なかなか立ち止まって聴いてくれる人はいません。せっかくのチャンスも自分で逃してしまって........。でもまさかムクドリが毎日聴いてくれていたなんて。ムクドリとはいえ、自分の歌をずっと楽しみに聴きたいと思ってくれていたのが嬉しくて嬉しくて。」


「それでライブとか、レコーディングとかに来てたんですね。」


かれんの霊はみきりんに一礼をした。


「はい。お騒がせしてすいませんでした。初めてあんなステージで歌うことが出来ました。ステージからの景色は素晴らしくて、ムクドリ達もすごい喜んでくれました。皆さんもステージの上でキラキラしていて、ファンの人達もすごい嬉しそうで。歌が好きなんですけど、正直、歌ってていいのかなって凄く悩んでいました。でも、歌っていて本当によかったです。皆さんにはご迷惑をお掛けしました。ごめんなさい。もうしませんので。」


みきりんは優しくクビを振った。


「ううん、気にしないで。歌が好きで、1人でも聴いてくれるならっていう想いは私も、メンバーも同じです。かれんさんのお役に立てて良かったです。」


「良くないな。」


ずっと黙って聞いていた、じょんれのんが割って入った。


「歌を途中で止められるのは、気分が悪いんだよ。レコーディングはどうすんだよ。」


きりんはカップ麺の中からフタが閉まっていく景色を思い出していた。じょんれのんはかれんをまっすぐ見つめて言った。


「ちゃんと一曲。聴かせてくれよ。」

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