第8話「まじで嫌われる5秒まえ」

 マリの件はさすがに学校中に広がった。

来なくなった理由は瞬のせいらしい。ひどい振り方をしたらしいとか、弱みを握っていじめていたとか、あながち間違ってもないうわさが拡散していた。


 悪評は広がったものの、マリの件のあと、瞬は女には困らなかった。悪いのに憧れる同級生やら、他校の派手めな女子やらが寄ってくるようになった。

 変に女慣れしてしまったせいで瞬は大人っぽくみえたのだろう。


 告られることも多くなり、すごいブスでなければオーケーして、やることだけやった。


 ほとんどの場合やったら、すぐ別れた。別れがめんどくさそうな相手には例のジャンケンをした。女が勝てば十万もらえる。負ければ無条件でわかれ、付き合ったことを公言しないという約束だった。


 もちろん、瞬は負けない。

しかし、それでも約束を守らず、しつこく連絡してくるものや、付き合ったことを言いふらす女がいた。

 女は勝手だなと自分のことは棚に上げて、瞬はおもっていた。


 さらに、賭じゃんけんの噂も広がって、もはや瞬と勝負する相手は校内にいなくなった。

 まわりには、頭の悪そうな悪友とやはり頭が悪そうでケツの軽い女しか残ってなかった。どいつもこいつも瞬は好きではなかったが、一人でいられるほど強い男でもなかったので、そいつらとずっとつるんでいた。


 ゆえに学校に居場所はなく、学校に行かなくなる日も増えていった。

 その辺の女にも飽きて、日常に退屈しはじめたので瞬はまたゲスなことを思いついた。


 今までは身近な女にしかあいてにできなかったが、握手できるアイドルだったら、俺ならキス、乳もみは余裕で行けると。


 なぜもっと早く気づかなかったのか。早速瞬は、意気揚々と大して好きでもないグループの握手券付きCDを買いに行った。


 手始めは、あのヤリチン野郎とお泊まりスクープされたあの女だ。俺も同じ土俵にたってやる。


 こうして、握手会で何人かのアイドルの唇を誰にも気づかれないまま奪った。この優越感のおかげで中2の後半は楽しく過ごすことが出来た。


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