第6話「マジでキメル5秒まえ。」
放課後マリが一人でいるところを見計らって、瞬は話しかけた。
「10万ほしくないか。」
「誰よあなた、なんなの。」
「事情は知ってる、欲しくないのか。欲しいならついてこい。」
瞬は早口で伝えた。もしついてこないなら、時間を戻す必要があるからだ。
瞬が踵を返すとマリはついてきた。
よし、とりあえずはうまくいった。
連れ出すのが一番の難関だと瞬は思っていた。
瞬は最も人が立ち寄らない視聴覚室に向かった。
そこで二人きりになって話を持ち掛けた。
「じゃんけんで俺に勝ったら10万をやる。」
「何言ってるの?」
「代わりに、負けたら1週間おれのやりたい時にやらせてもらう。」
「…馬鹿じゃないの何言ってるのあんた。後輩のくせに。」
めんどくさいので瞬は無言で10万を目の前に出した。
明らかにマリの様子が変わった。
「‥‥…マジで言ってるの?なんでそんな大金持ってるのよ。」
「やるのか、やらないのか。」
ついてくる段階でマリが金が欲しいのはわかった。
そうなれば主導権はこちらと踏んだ瞬は強気だった。
「…じゃんけんをすればいいのね。勝てば十万もらえる…。」
マリは考え始めた。やる前提の上の思考状態。
援助交際経験者のマリにとっては、そこまでセックスに抵抗があるわけではない。
負けても大したことない上に、勝てば10万。まったく悪い話ではなかった。
「お前が負ければ俺の好きにさせてもらう。ただ、負けた場合でも1週間後にもう一度同じ条件でチャンスをやる。そこで勝てば10万はくれてやる。そこで負けてもまた1週間後にチャンスをやる。」
決してやさしさではなかった。
瞬の下衆さ狡猾さはここに極まっていた。瞬は考えた、勝ったところでこの女が約束を反故にし、先生とか警察、親にねじ込んだら終わりだ。そうならないために、餌を与えておく必要がある。
一週間後にもう一度チャンスがあると思わせることで、マリは瞬に従わざるを得なくなる、なにせ、勝負はじゃんけんだ。すべてに負けるはずがない。関係を続けていればマリとしては10万が絶対手に入る、そういう条件だった。
マリは勝負にのった。
そうしてマリはこの後ずるずると瞬の言いなりにならざるを得なくなっていったのだ。
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