第2話「マジで考える5秒前」

その日、家に帰って何度も時間が戻れと瞬は祈ったがかなわなかった。

やはり、崖に落ちたのは何らかの勘違いだったのだろうか。

恐怖が生んだ妄想なのだろうかと彼はそう思うことにした。


次の日の朝、デジタル時計を見つめながら、彼はもう一度祈った。

今は7時35分00秒ちょうど。


時よ戻れ、彼は冗談半分でもう一度祈って、そして時計を見た


7時34分56秒だった。


錯覚ではない。間違いなくときは戻っていた。


そして、すぐに二度目の7時35分00秒にもう一度彼は祈ってみた。


今度は7時35分02秒だった。というか何の変化もなかった。

いつものようにデジタル時計は時を進めていた。

しかし彼は確かに一度時を戻していた。

念のためにもう一度祈ってみたが、意味はなかった。


次の日に全く同じことをしてみた、今度は7時30分に試してみた。

結果は同じで一度めだけデジタル時計は7時29分55秒になっていた。

時計の故障ではまさかあるまい。

間違いなく、一度目だけ時間が戻っている。二度目以降はダメだ。

 一日に一度だけ5秒ほど時を戻すことができる。

彼は確信した、自分には時間をほんの少しではあるが、戻す力があると。


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