第6話 息子語る・2
入院前の生活のことか?具体的にどういうことだ?食生活なぁ・・。夕夏はいつも俺の好みのものを俺好みの味付けで作ってくれていたな。体のことを気にはしてくれていても、仕事が大変そうだからってスタミナの付きそうなものをよく作ってくれていたよ。弁当もがっつり食べられるようなおかずを詰めていてくれていたし。休みの日にはお茶の時間にケーキを出してくれたりしてな。お前も一緒に食べたことがあるだろ?駅前のケーキ屋のモンブラン。俺はあれが好物なんだよ。気を利かせてよく買ってきてくれたよ。
いやいや、そういうものも食べつつ、野菜もちゃんと摂っていたよ。キノコのバターソテーとかじゃがバター、えーっと・・他には野菜の天ぷらとか。俺は生野菜が苦手だから夕夏が工夫して俺でも食べやすいような野菜料理を食卓に並べてくれていたんだよ。こういうところはよくできたやつだよな。
でも煮物とかはやっぱり母さんの味にはかなわないからよくダメ出しして作り直させたよ。母さんが結婚した当初に教えたはずなんだけど、イマイチ旨くないんだよ。それなのに口答えしてごちゃごちゃ言ってくるから頭にきて引っ叩いたことがあったなぁ。でもまぁ、仕方ないよな、嫁が生意気な口きくなんてあっちゃいけないんだから。母さんもそう言ってたし。本当に母さんを見習ってほしいよ。何年も主婦やってるくせに並み以上にもなれないなんて女としてどうなんだろうな。
いや、別に夕夏を嫌っているわけじゃないよ。夫婦なんだから当たり前だろ?好きとか嫌いとかじゃなくて、いい歳をして未熟なところにイライラするんだよ。例えば同僚の話に出てくる嫁さんの話を聞いて、その人と夕夏と比べたりするとすごく頼りない感じがしてがっかりしちゃうんだよな。その上、あいつしょっちゅう母さんに怒られてるだろ?何度もそんな姿を見てるともう庇う気も起きなくなるんだよね。でも俺は正しいことを言う母さんの味方だし、女の先輩でもある母さんに躾けてもらえてあいつも喜んでいたと思うよ。
罪悪感?なんで俺が罪悪感なんて感じないといけないんだ?俺は毎日働いて稼いであいつと母さんを養っているんだぞ。それに比べてあいつは毎日家の中にいて家事と母さんの世話だけやっていればいいんだから気楽なもんだよ。逆に感謝されたいぐらいだ。
いいんだよ、俺は夕夏に仕事と生き甲斐を与えてやってたんだから。だから母さんが亡くなって、あいつは今手持無沙汰になっちまってるかもな。俺の世話も大したものじゃないだろうし。そうだ、お前しばらく家に泊まって夕夏の世話になったらどうだ?あいつも暇つぶしになっていいんじゃないか?あはははは!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます