第4話 嫁語る・4

 吸い飲み?ええ、家にいた時から入院中もずっとお義母さんにはあれで水分補給をしてもらっていたわね。もちろん毎日洗って清潔にしていたから心配ご無用よ。

 

 そうね、お義母さんの死因は肺炎だったわね。高齢者なら誰でも罹る可能性のある病だわ。原因は・・・なんでしょうね。免疫力が落ちていたと思うからたまたま感染したんじゃないかしら。よくあるパターンでしょ。

 

 誤嚥?食べ物を詰まらせたことなんてなかったわ。水?そうね・・たまに咽ることもあったわね。それが肺炎の原因だと言いたいの?馬鹿馬鹿しい。咽ることは入院前からあったし、水分補給をしていたのは私だけではなかったのよ。家なら達也も、入院中なら看護師さんがあの吸い飲みを使って水分を与えていたんだから私の時に咽たことが死に繋がる原因になったとは言い切れないでしょ。


 またお義母さんの言葉?拷問ねぇ・・なるほど、お義母さんにとっては水分補給がそんなに辛かったのね。それなら私だけじゃなく、あの吸い飲みを使って水分を与えていたみんなにその言葉を伝えなきゃね。


 「お前たちは鬼だ」と。


 水分補給をすれば鬼で、水分補給をしなければしなかったできっとそれも鬼だと言うんでしょうね。最後の最後まで、本当に我儘な人だわ。嫌になっちゃう。


 それで、涼子さんはお義母さんの言葉の真意を探ってどうするつもりなの?当の本人はもう亡くなっているのよ。そもそもこんなところで過去の話をしていること自体何の意味も無いと思わないの?


 達也を助けるためですって?達也を助けるのはあなたじゃなくて病院の医者や看護師がすることでしょ?意味が分からないわ。


 お義母さんが話したようなことを私がお兄さんにもしているというの?達也は高血圧からの心疾患なんですって。お義母さんも高血圧だから遺伝かもしれないわね。それにお酒もタバコもやめないし、お義母さんの子供だけあって味の濃いものが好きだから入院という結果になっても不思議じゃないわ。しかしそれまで疑わるとはね・・。


 そんなにお兄さんが心配なら直接会いに行って、今ここで話したことを全部伝えて私から逃げろとでも助言してあげたら?その後は涼子さんがあの人を守ってあげればいいわ。


 はぁ・・すごく疲れたわ。もういいかしら?他に何か話したいことがあったら後日にしてもらいたいの。今日はもう帰ってちょうだい。一人になりたいわ。

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