第3話 嫁語る・3

 お義母さんを憎く思わなかったかって?そりゃあね、嫁である前に一人の人間だから頭にくることもたくさんあったわ。でもそれ以上に私は悲しかった。頑張っても気遣ってもその気持ちはずっと伝わらないから。だからって仕返しなんてしないわよ。達也も毎日お義母さんの様子を見ていたし、家に来るケアマネジャーやヘルパーから注意を受けることだってなかったんだから。


 ああ、腕と足の痣ならお義母さんがベッドから立ち上がるときに自分でぶつけてできたものよ。ベッドの両端の前後に付けていたでしょ?転落防止の柵。あれで立ち上がるときとか歩いているときにふらついてぶつけてできたんでしょうね。そういう場面はよく見ていたからわかるの。


 そんなに私を疑うなら掛かりつけだった先生に問い合わせてみたら?先生はお義母さんの体の状態を全部知っていたから同じことを言うはずよ。私も褥瘡のことは気になっていたから何度か先生に相談したことがあるの。痣の件だって私からケアマネジャーに報告したからケアマネジャーから先生へ連絡が行っていたはずだしね。虐待しようとする人間がここまで気を使うかしら?こんなに疑われるとなんだか悲しいを通り越してあきれてくるわね。まったく・・。


 涼子さんがお義母さんからいろいろなことを聞いたということはよくわかったわ。お義母さんが私を疎んでいたということも残念だけど再確認できたわ。でもね、こんなことは言いたくないけど、今まで何もしなかったのにすべてが終わった後に文句だけ言いに来るなんて酷いわよ。せめてお義母さんと話したその日に言ってくれたらよかったのに。いったい何がきっかけで私にこういう話をしようと思ったの?


 お義母さんが危篤になったとき・・ねぇ。あの時はいつどうなってもおかしくない時期だって先生も話していたじゃない。まさか私が危篤状態にしたとでもいうの?バカみたい。

 

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