第50話アポロジュニア1

大統領ブッシュは再分析を各研究所に依頼したが、二日後、


『探索機からの資料はもう十分に解析された、

あとは人類が直接SACに突入してみるしかない』


という結論に達した。大統領は決断した。

4人乗りアポロジュニアを緊急発進することにした。


SACが火星をかすめて地球に近づいてきている。

あと10日で月がSACに触れる。


この時を期して地上からアポロジュニアを送り込み

SACに突入を試みる。


SACの密度は中心部も周辺部もほぼ均一だ。これは

不思議なことだが探索機が持ち帰った資料で証明されている。


これで安全が確かめられれば、人類は心を一つにして

30時間SAC通過に耐えればいいということになる。


もし何らかの異変が起こればその時は緊急を要する。

全人類の英知を絞って大至急対策を考え出すしかない。


探索機の分析では楽観的だがナムストーンは危機を警告

し続けている。しかもその警告は高まりつつあるのだ。


ブッシュはオサムオサナイを信じた。アポロジュニアを

飛ばすしかない。ところが、


突然のアポロジュニア発信命令で待期していた宇宙飛行士

4人がNASAに向かう途中4人とも事故で死亡したのだ。


何かがこの作戦を阻止しようとしている。

ブッシュは天に向かって叫んだ。


「ナムストーン!ナムストーン!ナムストーン!」

大統領は直ちに命令した。


「予備飛行士を全員集合させよ。その中から

私が面接して4人を選ぶ」


ところがである。10名いる予備飛行士のうち

6名までがけがと病気で入院中だったのだ。

集合したのは次の4人のみだった。


操縦士のチャーリーはかなり偏屈で無口な

イスラエル生まれのユダヤ教徒。24才。


情報通信のモハメドは饒舌なアラブ人。

イスラム教徒で26才。


ジェームズは冷静な英国紳士で何でもこなす。

クリスチャン29才。


ジャッキーはひょうきんで面白い中国系の仏教徒

でメカが専門。23才。


何とかこの4人で出発するしかない。

無事帰還できればそれでいい。


「このメンバーで十分だ」

大統領は決断した。


「君たちの使命はただ一つ。月の周りをまわって地球に

無事帰還してくれればいい。ただし月の裏側でこの

ガス状星雲SACに触れてもらう。何か異変があれば


直ちに地球と連絡をとって大至急対策を考え出さなくて

はならない。その分析と判断が全人類の存亡にかかわって

くる。SACに人類で最初に突入する君たちは英雄だ」


チャーリーはアポロジュニアを直接操縦できることが夢の

ようであった。


モハメドはほんとは過激なイスラム教徒だった。いままで

なかなか先輩飛行士になれなかったのは秘しても隠し切れない、

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