第32話ドナルド1

10月にはいってすぐにドイツのキーツカーンから

オーストラリアで光る石が発見されたという情報が届いた。


オーストラリア中央部にあるエアーズロック付近を

パトロールしていた国立公園の警備員ポールモーガン

が砂漠に輝く光る石を夕暮れの薄明かりの中で発見した。


自宅に持ち帰ったところすぐにうわさが立ち、新聞記者が

訪ねてきて写真を撮って帰った。9月11日のことだ。


翌日地方新聞の片隅に写真入で出ていたこの記事がちょうど

オーストラリアを旅していた英国人の目に留まった。


彼には大英博物館で光る石のコーナーの責任者をしている

友人がいた。この記事を送るとその友人は大いに喜んで

キーツカーンに送ってよこしたのだ。


オサムオサナイはその住所に電話をいれた。まだ若い

青年の声がして本人だった。石は家に飾ってあるという。


オサムオサナイは詳しく事情を説明して、石が青黒く

不気味に輝くことがあったら真剣にナムストーンと

光が鎮まるまで唱え続けてくださいと依頼した。


「ナムストーン?」

「そうです。ナムストーン。できれば声に出して叫び続けてください」

「分かりました。その時はナムストーンと唱え続けてみます」


それから数日してナセルとケムンから同時にメールが届いた。


「いまアメリカから奇妙なメッセージが発信されている。

確認されたし」


タイトルを検索すると確かにあった。


『光る石の謎を知っている方連絡下さい。僕のおじさんを

助けて!ドナルド ブッシュ テキサス USA』


さっそくアクセスしてみて驚いた。アメリカ合衆国の

テキサス州ヒューストンからの発信である。


『僕は不思議な石を持っています。僕の心を映す不思議な石です。

僕が幸せを感じているときはこの石もピンク色に輝いていますが

僕が悲しく落ちこんでいるときは灰色です。この9月11日からは


暗く沈んだままです。僕のおじさんはジョージ ブッシュという人で

今アメリカ合衆国の大統領をしています。僕は彼の一番年下の甥っ子

です。どうか僕のおじさんとアメリカ国民を助けてください。


ドナルド ブッシュ 18才 高校生男子

ヒューストン テキサス USA』


というものだった。

オサムオサナイは直接国際電話をかけてみた。

なかなかつながらない。メッセージを伝えて

電話を切った。


「ドナルド君へ。次にバイブレーションが起きて

石が鈍く青黒く輝いたら『ナムストーン』と

色が収まるまで唱え続けてください。

オサムオサナイ KYOTO JAPAN」


すぐに返事のメールが届いた。


「何故あなたは僕の石が9月11日に

バイブレーションが起きて青黒く輝いたのを

知ってるんですか?」


オサムオサナイは詳しく今までの状況を

ドナルドに伝えた。


「空を飛ぶなんて信じられない?」


「信じなくてもいいから次にバイブレーションが

起こったら収まるまでナムストーンと

唱え続けてください」


「それはOKします」

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