第31話空前のテロ
暑い夏も終わり九月に入った。新学期が始まる。
夏の疲れも取れない11日の蒸し暑い夜、
一斉にナムストーンがバイブレーションを起こした。
キーツが、ナセルが、ケムンが、レイが、
オサムオサナイに連絡する。
日本は夜半だがヨーロッパは夕方。
トルコ、エジプトは午後。ネパールは昼だった。
オサムにはナムストーン仲間に危険が迫った時には
胸騒ぎがして、不気味に輝くナムストーンに
いくら祈っても明るさが戻らないことは何度かあった。
しかしキーツの大洪水の時にはおおよその予測がついたのだが、
今回は違う。何の前触れもなくしかも5人全員に同時に
バイブレーションが起きている。
石は青黒く輝いていた。その時、雲南からメールが届いた。
「光る石が輝いています」
大英博物館からも連絡が入った。
「石が不気味に輝いています」
メキシコとペルーに連絡すると向こうは早朝だった。
博物館に早めに出向いてもらうとはたして、
石は不気味に青黒く輝いていた。
まちがいない!何かが起こる。
祈るまもなく大事件は起きてしまった。
空爆、原爆。人類の手による人類への無差別攻撃。
空前の自爆テロが起きた。
旅客機を乗っ取りそれごと道連れにしてしかも2機が
ニューヨークの貿易センタービルに突っ込んだのだ。
高さも方角も変えて緻密な計算どおりに2期の航空機は
数分の差をおいてビルに激突した。
両機とも機体全体がすっぽりとビルに水平に
少しの無駄もなく突っ込み、すぐさま炎上した。
約1時間後にビルは完全に崩壊し瞬時にして
数千人の命が奪われた。
この日はほかにも国防省ペンタゴンに一機が突っ込み、
さらにもう一機がこれは失敗して丘に突っ込んだ。
6機が同時にハイジャックされてそのうち4機が
乗客もろとも突っ込み自爆したのだ。
問答無用の大規模同時多発テロが起きてしまった。
「もしかして、これだったのか?」
オサムオサナイは後悔しつつ手ごたえを感じた。
石はすでに輝きをなくしグレイに打ち沈んでいる。
今回は対応が遅れはしたが、これでナムストーンと
光る石が人類の危機に必ず反応することがわかった。
問題はどうすればそれを阻止できるかということだ。
オサムオサナイは各博物館に依頼をした。
「次回もし光ったらずっと光が収まるまで
ナムストーンと唱え続けてください」
危機を予知できるものは今、光る石と我々だけだ。
このことを知るものでしか今は祈れない。
危機が回避できなければ、人類は近い将来
間違いなく滅亡するだろう。
われわれの手で光る石とナムストーンを数多く探し出し
仲間を全世界に増やし張り巡らせて、ナムストーンの
大合唱で危機を阻止するしかないのだろうか?
世界全体が9・11以降大混乱に陥った。
冷静にきわめて慎重に日常性を取り戻さなければ、
テロリストの思う壺だ。
アラブの論理だけですべてを正当化するには無理がある。
今こそ思想の正邪を正さなければならない時なのだ。
根本的に悪いのは他を受け付けない原理主義だ。聞く耳を
持つことと仲良くやることがすべての根本だと思うのだが。
人類が苦労して蓄積した富を破壊や分断のために使用すること
ほどおろかなことはない。人類の幸福のために使われてこそ
賢明なる智慧と言えるのではなかろうか。
邪悪な悪魔の仕業が戦争とテロを生む。今こそ声を大にして
この悪魔と戦うべき時だ。
次なるバイブレーションは何時来るのか。日ごとに人類の終末は
迫っている気がする。一致団結して人類を救えるか否か?
油断のならない緊張が9月一杯続いた。
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