第29話光る石1

キーツはユーロトンネルを抜けて

ロンドンに向かっていた。


大英博物館には世界の芸術品や

歴史的な遺物など人類の貴重な遺産が

数多く収集保存されている。


植民地時代に強奪されたものがすこぶる多いが

これらの国が独立後には本来返却されるべき物なのに

英国政府はかたくなに返却を拒否し続けている。


世界の遺産はそれにふさわしい国家のもとで

厳重堅固にかつ安全に保持されるべきものだと

自負しているのだ。


その中のアフリカコーナーにその石は在った。

光る石(SHINNING STONE)と書かれてガラスケース

の中に厳重に安置されていた。


「1940年にアフリカのマラウイ湖付近で発見され

探検隊が持ち帰った」と添え書きがしてある。


普通の半透明な黒ずんだただの石だ。

添え書きにはさらに「はじめは青く不気味に輝いていた、

放射性物質ではありません」とあるだけだ。


キーツは係員に尋ねた。



「何かこの石に関する記録はありませんか?」

「この館には添え書き以上の記録はありませんが

国立図書館に当時の探検隊の公式記録が

永久保存されているはずですが」



キーツは国立図書館へ急いだ。

すると、あった。


『アフリカ探検隊の記録1940年植民地

マラウイ30日間の記録』というのが見つかった。


村人がマラウイ湖の近くに不思議な石がある

というので探検隊がたずねてみると木の祠の中に


この石が祀られて、村人の話では数年ごとに

青く不気味に輝くという。


1年前からはかなり頻繁に輝くとのことで、

放射能や熱が無いのを確かめて持ち帰ったそうだ。

それからの記録は無い。


キーツは考えた。ひょっとしたらと思って

大英博物館の当直の記録を調べてみることにした。


幸い博物館からはOKがでた。その日その日の

昼夜の当直記録が1日もかけることなく

記録されているのだ。


1940年12月7日午後1時アフリカより

「光る石」搬入、マラウイ探検隊とだけ記されていた。


ところが1945年8月5日午後11時15分ごろ

アフリカコーナーの「光る石」が突然光った


と記されている。さらに4日後大きく輝いて

1週間後元の黒い石に戻ったとの記録だ。


日本時間では8月6日午前8時15分人類初の

実戦原爆投下の時刻と完全に一致している。


長崎投下が4日後の9日だ。やはり、

キーツはみんなに報告した。


このころオサムオサナイは中国の

雲南省にいた。省都昆明には省立の

博物館もあるが光る石が置いてあるのは

民族博物館のほうである。


この博物館は昆明市の南、湖の北側に

あってエリア別に各地の民族の村に

分かれている。その中のアミ族の

民族館にその石はあった。


雲南省は人口約一億人日本の3倍の面積があって

1年中気候の安定した、夏涼しく冬暖かい

春のような都市、別名春城とも言うそうだ。



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