第28話天空の瞳2

安定水平に入ってゆっくりと空中で停止。

雲はすっかり晴れて新月の闇夜に

炎は最大限大きく輝きだした。


その時である。各自の石が手の甲を

突き抜けて白い光を四方に放った。


見つめられている。5人はとてつもなく

巨大な瞳を天空に見た。


大空がそのまま瞳なのである。

美しく澄み切った乙女の瞳。無心で

純粋な汚れなき瞳の中に5人はいた。


メロディが聞こえる。

妖精のような歌声。

心の底から癒される音と旋律。


遠い昔母に抱かれし安心の心ね。

ゆるやかな旋律が暖かい笑い声に変わった。

瞳が微笑んでいる。


不思議と5人の心にダイナミックな

エネルギーがふつふつと湧き上がってきて

体中にみなぎった。


5人は我に返った。充実感に満ち満ちて。

数分の出来事が数億年のDNAへの

原点回帰のひと時になったような気がした。


否、それは数億年ではない、もともと、

いまもむかしもこれからも存在している

宇宙の原点なのかもしれない。


ナムストーンの不思議な響きに、

それと連なる何かを皆感じ取っていた。


石の輝きは元の輝きに戻りピンクの色も

落ち着いてきた。45度のホーバリング

を維持しながらゆっくりと皆は下降を始めた。


大文字の送り火の炎がはっきりと見下ろ

せてきたが炎の勢いはかなり低下してきた。


水平飛行に移り、鴨川をくだり

京都タワーを迂回して、

嵐山を北上する。


消えかかった鳥居の炎を飛び越えて、

もうほとんど消えた左大文字、

まだかなり明るい舟形。


ほとんど鎮火した妙法の真上を通過して

東山如意ヶ岳を上昇する。


さすがの大の字も炎が衰え始めた。

さらに上昇して戻る。


宝ヶ池から北山、上賀茂、金閣と

炎はすっかりと消えて愛宕山登山口

に着地した。


なんだったんだろう?あの瞳は。

『がんばってね』

と言われている気がした。


京都中央ホテルに戻ってみんなで総括した。

みんなもやはり同じように目撃し体験していた。


レイはカトマンズにある寺の上層に描かれた瞳の、

さらに超特大の瞳にじっと見つめられている思い

がした。神の目、天の瞳といわれるものだ。


実際に宇宙にはそのような瞳が存在している

のだろうか?安らぎのメロディと妖精の笑い声。

みんなは今体験した。これは真実のようだ。


太古の昔天空より舟を呼ぶとはこのことだったのか?

と言うことは一応実験は成功した。現在でも天空より

舟を呼ぶことは可能であるという実証だ。


静かな興奮がみんなを包む。

たった今宇宙の瞳と接触できたのだ。

確信のエネルギーが個々の体中に満ちてきた。


我々の使命はいったい何なのだろうか?

何のためにこのようなことを体験して

いるのだろうか?


5人は地球規模の特殊な使命がある

のではと感じ始めていた。


5人はこれから起こる世界的な事件に

神経を研ぎ澄まさねばと決意した。


京都での実験は以上ですべてで終了し

翌日翌々日と琵琶湖や大阪を観光して

20日の正午皆は関空より帰国した。


レイはネパールへ、ケムンはトルコへ

ナセルはエジプトへ。そしてキーツは

ヨーロッパへ。


オサムオサナイはみんなを見送ると

中国雲南省へ行く手続きをはじめた。

キーツは帰国後すぐに大英博物館に

向かうはずだ。


我々の使命は何なのか?がこれからの

一大テーマである。世界的な事件に気を

配りながら各自勉学に励み


また来年8月の再会を約して元気一杯

皆それぞれの国へと帰国したのであった。




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