第25話送り火1

8月16日いよいよ運命の日の朝が来た。

今晩宇宙と接触できるかもしれない。


なんとしても成功したい。5人は徹底して

1時間祈りに祈った。


さあ出発だ。東山の右大文字から松ヶ崎の妙法

西加茂の舟形金閣寺北山の左大文字、そして

愛宕山鳥居本。


東から北山すそを西山にかけて移動する。

空中ポイントは京都中央ホテルの真上700m、

角度は45度。レッツゴー!


まず右大文字。ワゴンを銀閣寺の参道裏に止めて

山道を15分ほど登ると大の字の整然とした

点火台の広場に出る。


薪を用意していっせいに火をつけるのだ。

昔は銀閣寺門前町の若衆が大勢集合して火を

点したそうだが、今ではほとんどがボランティアだ。


点火は町の人がやる。石油をしみこませた75基の

薪の先端にいっせいに火をつけるのだ。


30分間火が消えないように火を点し続ける

大変な作業だ。標高が一番高いのはこの東山の

右大文字でやく400m。


あとは200mそこそこで地上からはほとんど見えない。

5箇所を一度に見ることは不可能だ。

そう、空中からでない限り。


夜8時になると町の灯が一斉に消える。

京都の町が真っ暗になるのだ。


その中を5山の文字が徐々に燃え上がってきて、

30分ほど燃え輝いて後は少しずつ炎は

乏しくなり光は徐々に消滅していく。


幻想的な約1時間なのである。これを空から見れ

たらどんなにかすばらしいことだろうか?


まもなく見える。が、何が起こるかわからない。

宇宙との接触があるかもしれないのだ。


5箇所の現場を訪ねてみた。右大文字如意ヶ嶽、

標高400m。銀閣寺東方の山腹で薪台は75基。


一年間かけて町内で集積された薪を

井の字型に積み上げて火を放つ。


他の4箇所より少し遅く点火され

一番最後まで燃え続ける。


火の勢いをを衰えさせないように

薪を追加し続けるのが大仕事だ。


この右大文字は北西に向かって大の字になって

いるので四条辺りから見るとKの字に見える。

一番有名なのがこの右大文字である。


続いて北方松ヶ崎、宝ヶ池の両脇、東山が

法の字。西山が妙の字。両方で90基の薪台が

あり標高は100mくらいでかなり見えにくい。


続いて上賀茂の西、西加茂船山の裾野標高200m

あたりが舟形。ヨットのような形をした舟の形で


50基の薪台がある。ここの薪は巻き上げて

包みのようにして上層に火を放つ。


その次が金閣寺の北の岩山で標高100mの岩盤に

40基のの杭が打たれ薪を組み合わせて火を放つ。


左大文字と言われるが右の大文字に比べれば

スケールは遥に小さく標高も低いので麓で

しか見えない。消えてしまうのも一番早い。

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