第20話実験
二日目の朝も九時きっかりに全員集合した。
真夜中にペルーのリマにアクセスしてもらったが
やはりデータは送れませんとのことだった。
光る石は1945年の8月に10日ほど光った
という記録があるらしい。昆明の光る石は同じ
1945年の8月に発見されている。
メキシコの光る石は同時期に発見された他の遺跡と同じところ
に展示されているからやはりこれも1945年の夏である。
光る石と命名されているからには発見された時には光っていたに違いない。
大英博物館はノーコメント。調べたければこちらに来て詳しく
調べてくださいとのこと。大学か政府関係の紹介状もいる。
何かありそうな気もする。行くべきところは大英博物館と昆明だ。
1945年といえばまさかあの原爆と関係があるのか?もしそうだ
とすればなぜ光る石は光ったのだろうか?人類滅亡の危機を警告した
のだろうか。まさか、しかしありえないことはではない。
この秋、昆明と英国のデータを解析すればそれが証拠になる。
ナムストーンが個人の生命の危険を警告するセンサーであるとすれば、
光る石は人類のあるいは地球生命体の滅亡の危険を予知するセンサー
なのかもしれないということか?
我々の使命は思いのほかとても重大なのではないだろうか。
五人は顔を見合わせて大きくうなずいた。
初日のテーマは五人そろうと何ができるかを探る実験である。
まずはじめにテーブルの上に◎△☆□などのマークを描いたカードを
裏返しておいてナムストーンと唱えて一枚ずつ言い当てていくゲームは
何回やってもちぐはぐでうまくいかなかった。次にコーラのビンを
テーブルの上においてナムストーンとみんなで唱えてふたを開けようと
試みたがみんなの身体が若干浮いたくらいでやはりうまくいかない。
皿にアルコールを入れて火をつけようとしたが駄目。壊れた時計を
動かそうとしたみたがこれも失敗。死んだ金魚を生き返らせることも
やはりできなかった。徐々にはっきりしてきたことはただひとつ。
五人で手を合わせてナムストーンと唱え続けると、その間床から
数センチ皆浮いているように見えるということだけだった。
どうもほんとに浮いているみたいだということで、
午後からはこの浮上実験に集中してみることにした。
まず手の組み方から考えてみる。右手は石を握っているから
そのままだが、左手で左隣の人の右手首をしっかりと握ることにした。
何回か試みると間違いなく数センチはその間(ナムストーンを唱えている間)
浮上していることがはっきりと確認できた。これはやはりすごいことだ。
さらに数回浮上唱和を繰り返す。リラックスしたほうがより長くより高く
浮上できるようだ。とはいってもせいぜい5cmが精一杯。
相当な集中力を要するのでかなり疲れる。夕方にはみんな完全にダウンして
今日は早めに就寝することになった。これは訓練すればほんとに大変なことに
なるかもしれない。疲れてはいたがみんな希望に目は輝いてきた。
次の日午前中ナムストーンを唱えながらの移動を試みた。全員で右方向にと
祈った。するとわずかばかり動いて着地したのだ。これは画期的なことだ。
訓練すれば空中遊泳ができるかもしれない。
まさかとは思いつつ、午後からは外に出てみることにした。リラックス
リラックス!力を抜いて瞑想に入るように軽く念じることがコツのようだ。
昼食は加茂川の傍で牛丼を食べた。
皆こういうものがとても珍しいらしく興味津々だが、
今はナムストーン浮遊実験のほうがそれに勝っていた。
五人は牛丼を食べ終わると。ゆっくりと三条通から
大橋の西詰めにでてそこから加茂川に下りた。
川土手は広いスペースになっていて子供たちが遊んでいる。
川面への傾斜は石組みだ。アベックが等間隔に仲良く座って
いて京都加茂川の名物にもなっている。
京都中央ホテルは御池通りにある。そこから三条四条五条くらいまでが
料亭の川床があるところで8月16日の夜にはこの川床のお客も
川土手のカップルも皆幻想的な大文字の送り火に天を仰ぐのだ。
上流へ向かう。丸太町通りをくぐり今出川を抜けると高野川との
合流地点が目の前だ。この近辺には雑草が生い茂っていて
人影はまったくない。ここなら十分やれそうだ。
五人は適当な草むらを見つけて円陣を作った。『リラックス』みんな目
で確認しながら手首を組みナムストーンを唱えるとすっとみんなの身体が浮いた。
スカイダイビングの五人組バージョンを地上から逆に上空へ向かっている格好だ。
1,2メートル上昇してすぐに着地した。皆の顔に緊張が走る。
「今度は北に1メートル移動して着地してみよう」
オサムがそういうとみんなはうなづいた。
「OK!」
みんなの意思が合致すれば難なく数メートルは移動できそうだ。
何度か繰り返す。
(ケムン)「橋にいた人に見られているような気がしたけど?」
(キーツ)「いや、見えていないと思うよ」
(ナセル)「はっきりしていることは、我々は空を飛んでいるということだ」
(レイ)「そうよ。楽しそうだから思いっきり遊泳してみましょうよ」
(オサム)「みんなの心が一致しないと危険だからあらかじめ予定を立てよう」
みんな大きくうなづいた。
(オサム)「真上10メートルくらいまで浮上して1回転しゆっくりと着地してみよう」
みんなでオッケーと答えて再び手を組み浮上、ゆっくりと一回転して静かに降下した。
(オサム)「これが基本だと思うからもっとリラックスしてもう一度。
10秒間空中で停止してから大きく一回転してゆっくりと着地。OK?」
再び浮上する。周りの景色を眺めながらさらにもう一度。
だいぶみんな離れてきた。だって楽しいんだもん。今は何故浮上するのか
などは考えないことにして浮遊に集中した。
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