第18話研究発表1

スケジュールは次のようになっていた。


8月10日 正午関空着→京都へ  ゆっくり休んでもらう


8月11日 午前9時→10時   ウォーミングアップ

      10時→12時    研究発表 ナセル ケムン

      午後1時→3時    研究発表 レイ オサム

      3時半→4時半    研究発表 キーツ

      午後6時まで意見交換会

      徒歩で祇園まで

      夕食はしゃぶしゃぶ

      午後9時解散


8月12日 実験1

  13日 実験2

  14日 実験3


8月15日 実験のまとめ


8月16日 大文字の送り火


8月17日 今後のスケジュール

8月18日 琵琶湖めぐり

8月19日 京都市内観光 打ち上げ

8月20日 正午関空より帰国


自宅に帰っていたオサムオサナイは翌朝ナムストーンを5分ほど

唱えて朝食を済まし京都中央ホテルの最上階へと向かった。

とてもすばらしい見晴らしだ。昨晩の夜景も美しかった。


豪華な最上階の絨毯を踏みしめ大部屋の扉を開けると

皆はもうそろっていて談笑していた。


居間の大テーブルに各自石とノートパソコンを置いて、

スクリーンの反対側中央にオサムその右手にキーツとレイ、

左手にナセルとケムンが座った。


皆はまだナムストーンを唱えていなかったので5人そろって

5分間自分の石にナムストーンを唱えることにした。


小声ながらも美しく唱和して座ったまま5人の身体は

10cmほど宙に浮いていたようだ。


各石は美しくピンク色に光り輝き厳粛にして荘厳なひと時だった。

オサムオサナイが右手を高く上げて合図しゆっくりと皆着席した。


     

「それでは研究発表を始めます。まず一番目に

ナムストーンの物理的天文学的考察と言うことで

ナセルベックハム博士、お願いします」


ナセルはまじめな顔をして語り始めた。


「ほんとに最初のストーンとの出会いからしてポーンと

車から放り投げたくらいですからそれはそれはまことに手荒な

扱いをして申し訳がないと深く今では反省をしています。


最初は何も分からないものですからかなづちでたたいてみたり

バーナーで焼いてみたり冷凍庫で凍らしてみたりしましたが

傷ひとつ尽きませんし硬度はかなり硬く熱にはめっぽう強い


物質だと思われます。放射性元素は皆無ですしX線はすべて

素通りしてしまいます。スペクトル分析ではその光の色が吸収

されるだけでまったく屈折が起こりません。自ら発光しています


が熱はまったく発生していませんのでいわゆる冷光と思われます。

発光源が何なのかどこに存在するのかさっぱり分かりません。

時々姿を消すのは瞬間昇華と考えられます。瞬時に空気中に


昇華して再び好ましい条件下の下に定位置に気体から液体を経ず

して瞬時に固体として顕現するようです。でなければ異次元との

交流としか考えられません。とにかくこの石は意思を持っています。


地球外の惑星においても物質の構成元素はほぼ同一のものですから

ナムストーンはいまだ未確認の輝石鉱物だと思われます・・・・・」


オサムオサナイはナセルの説明を聞きながら考えた。あるようで

ないようでそれでも間違いなく存在している。形は不明だが盛り

上がったい消滅したりする。感情とか心とか命とか自然治癒力とか


不可思議だが現に存在している。頭の中にもう一人の自分がいて

いつもしゃべっている。すぐ元気付けたり本音をわめいたりしている。


俺っていったい何なんだとあるとき気づいた。眠っている時の俺はどこ

にいるんだ?俺は何時からオサムオサナイなんだ?まったく不思議で

仕様がない。それともうひとつ。自分は間違いなくいつか死ぬということ。


この現実は厳しい。いつか肉体は滅ぶともこの一念や思いはどこへ?

眠った無自覚の状態が永遠に続くのか、それはどういうことだ?

よく考えてみればつい最近俺は生まれた。その前の記憶はないが、


本能的にずっと生命に刻み込まれた太鼓からの情報がある。それは

良心とか惜別とか激怒とか強烈なシチュエーションの時に感じる。

地球を50億年とすると人類の歴史何万年というのはそのほんの


顕微鏡的ミリ単位だ。数十年先には間違いなくこの自分は地球上には

いない。宇宙に溶け込むのか?ナムストーンが時折姿を消すように。

宇宙には意思があるように思えて仕様がない。自然治癒力や生命の誕生


は宇宙の意思の表れだ。傲慢な人類が邪悪の害毒をこの地球に垂れ流し

続けるならば必ずしっぺ返しが来る。などといろいろ思いをめぐらして

いるうちにナセルの講義は終わった。



次にケムンアタチュルクが各国の国立博物館にメール

を入れて光る石の存在情報を徹底して調べた報告をした。


そのほとんどは放射性元素を含む鉱脈とか、太陽の入射角度によって

暗がりでも輝く輝石だとか、蛍石のような類のものだったが、

その中にいくつかそうでない特殊な光る石があることが分かった。


その一つは中国雲南省昆明にある民族博物館に、1945年8月、

アミ族の農民が石林の鍾乳洞の奥で卵大の大きさの不思議な光る石

を見つけて、あまりの不気味な輝きに目を背けて引き返そうとしたが、


どうも気になって熱くもないので手ぬぐいに包んで持ち帰り床下に

隠していた。三日間不気味に青黒く半透明に輝いていたが、四日目

の朝普通の黒ずんだただの石になっていたがやはりなんとなく不気味で


詳しく事情を説明して博物館に引き取ってもらった。博物館では

その石を分析しようとしたがとても硬く、時折不気味に輝いたりするので

その記録をとり続けて今も昆明の博物館に安置してあるとのことだった。


二つ目はペルーの博物館。1901年にチチカカ湖付近でやはり農民が

見つけた。記録では1945年8月に10日間ほど大きく光り続けたとある。


三つ目はメキシコの国立博物館。光る石と命名されているだけで卵大の

何の変哲もないただの黒い石だそうだ。ずさんな管理のため何の記録もない。


四つ目は大英博物館。イギリス植民地時代に東アフリカのマラウイ湖付近で

探検隊が発見して1940年に本国へ持ち帰っている。その時も不気味に輝いて

放射性物質ではなさそうだと持ち帰った時にはただの黒い石になっていたそうだ。


以上の四つの石が不思議と同じ時期に光を放っていたようである。詳しく

記録を照合すれば何らかの新事実が明らかになるはずだ。これらの光る石と

我々のナムストーンとは関連性はあるのか?とてもよく似ている。


世界にはまだ発見されていない光る石やナムストーンがきっとあるはずだ。

何のために光るのか?さらにこの現象はいったい何時まで続くのか?

謎はますます深まるばかりだった。

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